買われた娘は主人のもの
「…お優しいテイル様…。私は大丈夫です…こんなにテイル様に気にかけて頂けるなんて、私はとても幸せです…」

 しかしそれを聞いたテイルは激しく首を横に振る。

「っ、私の過ちは、そんなものでは…っ…」

 困惑のテイルに、エイミはまた笑い掛ける。

「…お優しいテイル様…お慕いしています…」

 エイミはコリーンから前に教えてもらった尊敬の念を表すこの言葉をテイルに告げる。
 しかしエイミは、『憧れ』の意味のほか、『恋しい』という意味があるとは知らなかった。

 聞いたテイルは表情を引き締め、ベッドの足元に腰掛けると、 そっとエイミを抱き寄せたまま自分に向かい合わせて膝に座らせた。

「テイル様…」

 向かい合い彼に抱きしめられたエイミはテイルを見つめる。

 テイルは答えない。
 エイミから見える、下を向いたその横顔は苦しそうですらあり、彼は黙ったままだった。

(テイル様は悪くないのに、どうしてそんなに自分を責めるの…?)

 温かい身体に包まれたエイミは次第に主人のときとは違う穏やかな気持ちになり、黙ってテイルに身を任せた。

(…御主人様にこんなことを知られたら、私はどんな罰を受けることになるだろう…?でも、なんだか心地いい…今だけは、テイル様にこうされていたい…)

 異性は主人とこの執事長しか知らないエイミ。
 こうして異性に抱きしめられ胸が高鳴るのも初めてのことだった。
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