買われた娘は主人のもの
 しばらくするとテイルはエイミを抱き上げ、ベッドに寝かせた。

「…今日は寝ていろ…。食事は後で持ってこさせる…」

 穏やかに気遣われ、エイミは微笑んで頷いた。

「ありがとうございます、テイル様…」

 彼も頷く。
 そして部屋を出ようとしていたテイルはもう一度こちらを振り返る。

「…娘…『私』のことは、『好き』か…?」

 テイルからの突然の質問。
 エイミは一瞬戸惑ったが、迷わず答えた。

「…はい、テイル様が好きです…!」

 テイルは困惑の表情を浮かべた。
 エイミは、主人の買った娘が迷わず執事長である自分を好きだと言ったことに困ったのだと思った。

「…申し訳ありません…でも、テイル様に嘘を付きたくないんです…」

 頭を下げるエイミにテイルはそっと微笑み、

「…分かった。すまない…」

そう言って部屋を出ていった。

(…私、テイル様の子犬だったら良かったのに…。きっとあの方なら、少し変わっているけど私に優しくしてくれる…。それなのにテイル様が見つけて買ってくれた私は、あの冷たい御主人様のもの…)

 エイミは、テイルは主人のために買ってきた自分を憐れんでくれているのだと思った。

 もう主人に対し役目は果たしたくはない。
 役目の相手が主人ではなく、せめて自分を気遣ってくれるようになったテイルだったらどんなにいいことか。
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