買われた娘は主人のもの
「…どうしたの??」

 コリーンはエイミに声を掛けたあと、すぐに気付いたらしく言った。

「ああ、期待した??…そんなはずはないわね…。入浴の許可は、本当に御主人様のご好意よ?私がお願いしたらすぐに許可を下さったわ」

 エイミは正直、今は主人のことなど考えたくはなかった。

「…感謝しないといけませんね…」

 ただそうコリーンに返し、下を向いて黙り込む。
 コリーンはそれを見てため息を付いたらしい。そして付け加えた。

「…でも、テイル様はあなたに逢いたいそうよ」

「っ、テイル様が…!?」

 顔を上げて反応したエイミにコリーンは再び小さくため息をつく。そして、

「…エイミ…ダメよ、その…」

 コリーンが言いかけたその時、更衣室の外に待機していたバラドが戸を開き、こちらに声を掛ける。

「コリーン、まだか」

「…終わりましたわ。今参ります」

 コリーンはいつものように澄ましてバラドにそう答えたのだった。


 部屋に戻るとテイルがすでにおり、エイミの食事を持って立っていた。

「テイル様…」

 エイミの顔は安心感から自然と笑顔になり、テイルの方も安堵のような穏やかな表情を浮かべる。

「…では、テイル様」

 コリーンは澄まし顔で頭を下げると、バラドとともに部屋を出ていった。
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