買われた娘は主人のもの

彼の気持ち

「娘、こちらへ…」

 テイルはそっとベッドにエイミの食事を置くと、手を広げエイミを迎える。

「はい、テイル様」

 エイミは緊張はしたが微笑んでテイルのもとへ。

「…お前は素直だ…お前が欲しい…このままお前を抱き、ともに朝を迎えることが出来たなら…」

 抱きしめたまま強い想いを込めるように呟いたテイル。しかし、それを聞いたエイミは顔を歪めた。

「…朝…?」

 テイルの言った言葉は、エイミからすれば『役目』のことしか出てこない。

「…テイル様も、私に『役目』を命じるのですか…?」

 エイミの悲しげな声に、テイルはハッとして、ゆっくりとエイミの顔を見た。

「…まさか…本当の意味を知らないのか…?」

 テイルのその言葉も頭に入っては来ないまま、エイミはゆっくりと首を横に振り、続ける。

「…テイル様も、私に役目を果たすようおっしゃるなら…お受けいたします…」

「娘…そうではないっ、そうではなく…」

 テイルは何も言えなくなったらしく、エイミを抱きしめたまま黙ってしまった。

「テイル様…」

 泣いてはいけないと思っても、テイルにまでそう思われていると思うとやはり悲しくなり、止めどなく涙が溢れてくる。

「…娘…『私』のことは『好き』か…?」

 前にもされた、テイルからの質問がまた。
 エイミは自分を何とか落ち着けて考える。

 テイルが執事長であろうと変わり者であろうと、自分を気に入り抱きしめてくれる彼が好きだった。
 例え彼に対して『役目』を果たす事になろうと、テイルのためなら耐えようとエイミは思った。

エイミは告げる。

「…好き、です…テイル様…」

 小さな声で囁くように言うエイミに、さらにテイルはそっと尋ねる。

「…本当か…?」

「…はいっ…!」

 今度はテイルに伝わるよう、ハッキリと返事をする。

「ならば…私を信じてくれ…お前のその身だけが欲しいのではないと…」

 好きな相手であるテイルの言葉に、エイミはなんとか頷いた。
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