買われた娘は主人のもの
　手首の縄を外され、代わりに主人の熱い手に強くベッドに押し付けられたエイミは抵抗もできないまま泣き叫ぶ。

　声が嗄れ涙が溢れ続けても、主人ははだけられたエイミの素肌を、まるで感触を確かめるかのように無言のまま指でなぞり続ける。

　そしてエイミは、ついに主人に初めてを奪われた。

　面越しに聞こえる熱い吐息に、自分が溶かされてしまいそうになる。
　そして初めての痛みが別の感覚に変わる頃、エイミは頭の中で何かが弾け、そのまま気を失った。



「…ん…」

　気付けば夜は明け、カーテンの開けられたままの窓からは明るい日差しが差し込んでいた。

　身体を動かせば奥に鈍い痛みを感じ、何よりもだるい。
　声は嗄れ頭はぼんやりとしていて、エイミは自分の身に何が起きたのかを必死に思い出した。

（…御主人様のお屋敷…私は…）

　主人はすでにこの部屋にはいなかった。
　手首を縛られていた縄も、身体に巻かれていたタオルも無い。一枚の毛布が掛かっていただけだった。

　次々と記憶に蘇った主人の冷たい目、冷たい言葉、乱暴な態度。
　そして初めての…

　自分は買われた。一度でなど終わるはずはない。
　そうなると逃げ出す術もない自分には、主人に飽きられるまでの終わりの見えない時をずっと昨晩のように…
　飽きられれば、変わり者と言われた主人のこと、あのように│嬲《なぶ》られた挙げ句に命を奪われるかもしれない。

「っ…」

　絶望しか見えない今の自分。
　エイミは泣き崩れた。
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