買われた娘は主人のもの

笑みのメイド

「ずいぶんと気に入られたみたいね。」

 いつの間にか背中に聞こえた声にまた身体をビクリと震わせる。

 恐る恐る振り返ると、それは昨日自分を磨き上げてくれたあのメイド、コリーンだった。
 清掃用具を持ったまま楽しげにこちらを見ている。

「あの方は気に入らなければ相手をすぐに追い出すの。言い寄ってきた相手をね。でも、あの御主人様が娘を買おうなんて初めてなのよね…何かが起きるのかしら?」

 エイミは薄い毛布を身体に巻き付けベッドに座り、背中を丸めたままコリーンの言葉に怯え震えた。

「あら、悪い意味ばかりで言ったんじゃないわ。ごめんなさい…あなたって本当に子犬みたい、ふふふっ」

 コリーンは細い指を口に当て困ったように笑っていたが、

「いけない、バラド様がもうすぐでいらっしゃるんだった。着替えの時間よ、子犬ちゃん」

 そう言うとエイミに、薄い下着一組と一枚の服を投げてよこした。

 薄手の紺の、飾り気の無いワンピース。
 そこにいるメイドのものよりも軽そうな生地のものだった。

「動ける?まずはそれを着てお食事、そのあとは私と屋敷のお掃除よ。私はあなたの『お世話係』だから、ついてきてもらうわ」

 コリーンは再び楽しげに笑うと、エイミにコップの水一杯と濡れた顔拭き用のタオルを手渡し、この部屋の掃除を始めた。

 身に付けていたタオルは見当たらず毛布を巻き付けただけの自分。当然下着は着ていない。
 彼女は出ていく様子も無く掃除を続けている。

 エイミは水を飲むと、仕方無く広いベッドの上で縮こまりながら与えられた下着とワンピースを身に着けた。
< 6 / 67 >

この作品をシェア

pagetop