買われた娘は主人のもの
 食べ終え横になろうとしてすぐ、エイミは自分のぬいぐるみがこの部屋にはないことに気付いた。

「リュカ…?」

「…あ…」

 コリーンはすぐに気付き、そして言った。

「…ごめんなさい、あの子はいま洗っているの…」

 エイミはぬいぐるみを置き去りにし手間を掛けさせてしまったことを知り、申し訳無く思った。

「ありがとうございます、コリーン様…私が洗わなくちゃいけなかったのに…」

「いいのよ…」

 コリーンはそれだけ言ってニコリと微笑んだ。

「眠りなさいエイミ…あなたが帰ってきてくれただけで、私は嬉しいわ…」

「はい、ありがとうございますコリーン様…」

 コリーンは出ていった。

 彼女はいま自分に他を聞かせれば負担になると考えたのかもしれない。
 しかし、自分が戻ってきた目的である主人がどうしているのかを聞きそびれてしまった。

「…会いに、行かなきゃ…」

 そっと身体を起こす。しかし、身体は思うように動かなかった。

 そしてコリーンの先ほどの悲しげな表情が蘇ると、無理をするわけにはいかないと思い始めてきた。

「…好きな人にも、会いにいけないなんて…。なんて私は情けないんだろう…」

 エイミは涙を数粒落とすと、なんとか自分の気持ちを抑え込もうと口をつぐんだ。
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