7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
「なんなのよ、もう!」

どうして永斗さんは頑なに人を信じようとしないんだろう。

お金持ちはそういうものなんだろうか。庶民の私にはさっぱり分からない。

そのとき、コツコツッとヒールの音が近付いてきた。

「初めまして、マリアと申します」

永斗さんと入れ違いでやってきた白人女性は流暢な日本語で挨拶した。

「初めまして!柏木沙羅です」

ソファから立ち上がり頭を下げる。

「沙羅様。私のことはマリアと呼んでください」

マリアの柔らかい笑顔に緊張でガチガチだった私の心が少しだけ緩んだ。

「日本語がお上手ですね」

「沙羅様、敬語はやめてください」

「じゃあ、マリアもやめて?」

「ダメです。永斗様に怒られてしまいます」

マリアは愛嬌のある笑みを浮かべて肩をすくめた。

話を聞くと、マリアは30歳。私の5歳年上だ。

子供の頃に数年日本に住んでいたことがあるらしく日本の文化や風習にも詳しいようだ。

私は大豪邸の中を案内してもらうことになった。

総大理石の床は綺麗に磨き上げられ、外から差し込んだ光でキラキラと輝いている。

「こんなに広いお家初めて……」

螺旋階段を一歩一歩踏みしめるように上がっていく。階段の手すりは凝った彫刻が施されている。

廊下がはるかかなたまで続いている。端から端まで歩くだけで一苦労だ。

「ふふっ、驚きますよね。ちなみに寝室は13、バスルームは9つあります。地下スペースには映写室とサウナ、マッサージルーム、ゲームルーム、バーなどが完備されています」

「え……!?もうわけが分からない」

「永斗様はこのおうち以外にも世界各地に複数の住宅を所有しています」

「し、信じられない……。永斗さんって一体何者なんですか!?」

「沙羅様。また敬語に戻っていますよっ」

「ああ、ごめんなさ……ごめんね」

ふふっとマリアが微笑む。

「いえ、こちらこそすみません。沙羅様が付き人やメイドに敬語で話さないように練習させろと永斗様から申し使っていまして」

なるほどね……。こんなところからすでにパーティを見据えた準備をしているなんてまるで抜かりがない。

「そういえば、永斗様が何をしているかご存知なかったんですね!」

マリアが驚いたように声を上げる。

知るはずもない。だって、私と永斗さんはほんの数時間前に出会ったばかりなのだ。

「ロバート一家はアメリカで有名な実業家一族で知らない人はいません。長男の永斗様はアメリカトップの石油関連事業の会社の社長です。また、投資家としても有名なお方です」

「石油?」

「簡単に言うと、石油王です」

「せ、石油王!?」

思わず口をあんぐりと開ける。

まさかそんなにもすごい人だったなんて……。

お抱えのSPがいたり、リムジンに乗ったり、この豪邸だって……。

お金持ちだとは思っていたけど、まさかそこまでとは考えてもいなかった。

「ご、ごめんなさい。大きな声出して……。私の考える石油王とは全くイメージが違っていて驚いちゃって……」

石油王といえばアラブの王子様のようなグトゥラという白い布をかぶり、アガルという黒い輪っかのようなものを被るイメージだった。

でも、永斗さんはダークスーツを着こなしたビジネスマン風な出で立ちだった。

「初めて知る方は大抵驚かれます。ですが、正真正銘の大金持ちです。さあ、こちらへどうぞ。ここが沙羅様のお部屋となります」

扉が開かれた瞬間、私は目を輝かせた。

まるでお城のようなドラマチックで洋風なインテリアに目を奪われる。

低めのベッドは一人で寝るには広すぎるぐらい大きい。
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