7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
朝食を食べ終えた後、私はマリアに付き添われ警察署に出向き盗難届を出した。
その足で日本大使館に出向き、紛失一般旅券等届出書を提出しパスポートの再発行手続きを取った。
「ありがとう。マリアのおかげですごくスムーズだった」
「いえ、お礼を言うなら永斗様に言ってください」
「え?」
「朝一番に沙羅様を警察署に連れていくようにと言われたんです。そうしないと一週間後に日本に帰れなくなるから急げって」
「そうだったんだ……?」
永斗さん、私との約束ちゃんと守ってくれたんだ……。
「あら、もうこんな時間。このあと、永斗様と合流してお買い物をする予定です」
「お買い物?」
「はい!私も同行させて頂きます。ちなみに5番街はご存知ですか?」
「5番街へ行くの!?」
ショップだけではなく有名なビルが点在している場所。
フラットアイアンビル、ロックフェラーセンター、トランプタワー!!
「ふふっ、ご存知のようですね」
思わず目を輝かせる私にマリアがくすっと笑う。
マリアが運転手さんに場所を告げると車はなだらかに発進した。
「……す、すごい……!」
マンハッタンの中心を南北に走る名だたる高級店がずらりと並ぶ5番街。
その真ん中にある高級ブティックの前で車は停まった。
近隣にはセント・パトリック大聖堂など有名な観光スポットがある。
雑誌の写真を見て心を躍らせていた場所の近くに今自分が立っていることが信じられない。
そして、更に信じられないのが私の目の前に超高級車が停まり歩み寄ってくる男性がいるということだ。
「沙羅」
通り過ぎた女性が永斗さんのことを羨望のまなざしで見つめる。
熱い視線には慣れっこなのか永斗さんはものともせず真っ直ぐ私の元へ歩み寄った。
スリーピースのネイビースーツに身を包んだ永斗さん。昨日とはまた違った雰囲気だ。
整えられている黒髪は一ミリの乱れもない。
「――何をしてるんだ。早く入るぞ」
永斗さんは私にそう告げると、何のためらいもなく高級店に足を踏み入れた。