7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
キッチンの冷蔵庫の中には豊富な食材がぎっしりと詰め込まれている。

好きなものを自由に使っていいとマリアが言っていたのを思い出す。

総大理石の綺麗に磨き上げられたキッチンに立つと、私は腕まくりをして冷蔵庫の中から卵などの食材を取り出した。

一人暮らしをしていたし、料理はそれなりにできる。

「えっと……火の付け方は……」

日本とは違う仕様のキッチンに手間取りながらなんとか卵粥が完成した。

料理をトレーに乗せて永斗さんのいるリビングに運ぶ。

「お口に合うか分かりませんが、よかったらどうぞ」

トレーに乗せた卵粥を見た瞬間、永斗さんは驚いたように私の顔を見つめた。

「なぜだ……」

「え？」

「なぜ俺に構う。お前と俺は偽りの関係だ。人の目がないときに俺のフィアンセの振りなどしなくてもいい」

つっけんどんな言い方にムッとしながらテーブルの上にトレーを置いた。

「私が勝手にしていることなのでお構いなく」

ハッキリそう告げると、永斗さんはいぶかし気な表情で私を見つめた。

「見返りを望んでいるのか？欲しい物があるなら言ってみろ。買ってやる」

「なっ……違います！やめてください！！」

スーツの内ポケットに手を伸ばそうとする永斗さんを制止する。

「見返りが欲しくてこんなことをしているわけではありません！！」

「だったらどうしてだ」

「永斗さんの体が心配だっただけです。朝食も夕食も食べてないのにこんな夜中まで仕事をするなんて体に悪いです。せめて栄養だけでも取らないと」

「お前の気持ちが俺には分からない」

困惑したように顔をしかめる永斗さんに私はため息を吐く。

「ハァ……。全員が全員お金の為に動くと思わないでください」

「お前は本当に変な女だ」

テーブルの上の卵粥に視線を向けると、永斗さんはノートパソコンを閉じた。
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