7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
「なんでそんなところに立っているんだ。こっちへ座れ」
促されて隣に座ると永斗さんがレンゲでおかゆを口に運んだ。
その食べ方もスマートで目が離せない。彼にかかれば何をしていてもすべてが絵になる。
「……うまい」
思わず漏れてしまったとでも言うようにハッとした表情を浮かべると、永斗さんはきまりが悪そうな表情で私から顔を背けた。
「そう言ってもらえてホッとしました。本当は余計なことをするなと怒られるかと思っていました」
朝食を一緒に食べたいと提案すると永斗さんはすぐに拒んだ。
明らかに一線引こうとしているのを感じた。
すると、永斗さんが真剣な表情で私を見つめた。
「俺は……お前のような人間を見たことがない。見ず知らずの子供を助けたり、付き人に優しく接したり。それどころか、お前を無理矢理ここへ連れてきた俺に料理まで振舞う始末だ」
永斗さんの灰色の瞳に見つめられると調子が狂う。
「長女気質だから、ですかね?これといった長所はありませんけど、面倒見の良さだけは自信があります」
両親が亡くなってからずっと、私と妹たち二人は叔父と叔母に育てられた。
子供のいなかった二人は快く私達を引き取ってくれたけど、負担になっていただろう。
旅館の経営と3人の子育ての両立はたやすいことではなかったはずだ。
そんな叔父たちと過ごしているうちに、いつからか私は子供ながらに我慢する術を覚えた。
自分を犠牲にしたとしても、周りの幸せを一番に考えるようになった。
高校卒業後、大学進学せず就職したのもそのせいだ。
仕事をしてお金を稼ぎ、妹たちの学費を出す。妹たちには自由に生きて欲しい。
就職してからは毎月一定額を叔父の口座に振り込んだ。
叔父は『無理しなくていい』と言っていたけど、幼くして両親を失った妹たちに私がしてあげられるのはそれぐらいしかなかった。