7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
「なぜ拒否するんだ。女はいつだって俺を悦んで受け入れる」
永斗さんは不服気な表情を浮かべると、私から離れソファに座った。
「残念ながら私は違います!!」
「お前は俺に抱かれるのを望まないのか」
「望みません!こういうことは愛する人とするべきです!愛し愛され……相思相愛になってからじゃないとダメなんです!」
トレーを手に取り立ち上がる。
「……ワイン、ごちそうさまでした」
頭を下げてお礼を言うと、永斗さんは目を丸くして表情を緩めた。
「こんな状況でお礼を言うなんて。お前はバカみたいに律儀だな」
「バカは余計です……」
「褒めているんだ。お前はおもしろい」
目を細めてふわりと笑った永斗さんに目を奪われ、不覚にも胸がトキめいた。
こんな風に自然に笑ったのを見るのは初めてだった。
いつもクールで冷めているのに、こんな風に笑えるんだ。
新たな魅力に気付いてしまった私は「おやすみなさい!」と告げて逃げるように歩き出す。
「おやすみ」
すると、背中に掠れた低い声がぶつかった。
思わずその場に立ち止まって恐る恐る振り返る。
まさか返事をしてくれるなんて思わなかったから。
「どうして……」
「何を驚いているんだ。挨拶が人間関係の基本だといったのはお前だろう」
目が合うと、永斗さんは穏やかに微笑む。
再び鼓動が速まる。永斗さんは読めない。私をかき乱す天才だ。
私はふいっと顔を背けると、永斗さんから逃げるようにキッチンに飛び込んだ。
「なにあの顔……、反則だから……」
ズルズルとその場に座り込み顔を両手で覆う。
いまだに心臓がうるさい音を立てて鳴り続ける。
あまりのギャップに頭がついていかない。
「うぅ……。あんなのズルすぎる!」
私はしばらくその場から動くことができなかった。