7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
第三章 真心の愛
昨日の永斗さんとのやりとりのせいでほとんど眠れないまま朝を迎えた。
眠い目を擦りながらダイニングへ足を踏み入れる。
「沙羅様、おはようございます」
「おはよう」
マリアの笑顔で迎え入れられたとき、ある事に気が付いた。
テーブルには優雅にコーヒーを飲みながら英字新聞を読む永斗さんが座っていた。
「え、永斗さん!?な、なんで……!?」
「何を驚いているんだ。お前が朝食を一緒に食べろを言ったんだろう」
呆れた口調の永斗さんに言葉がでない。
確かに言った。言ったけど――。
「まさか本当に食べてもらえるなんて思ってなくて……。遅れてすみません」
慌てて席に着くとマリアが嬉しそうに微笑んだ。
「お二人って、いつの間にそんなに仲良くなったんですか?もしかして昨日の夜、何かありました?」
その言葉に昨日の出来事が脳裏をかすめる。
「ち、違う。そんなんじゃなくて――」
「その慌てぶりが余計に怪しいです。それに昨日の試着室での様子も変だったし」
「ま、まさか!ない!何もないの!!本当よ!」
「怪しすぎます」
マリアにからかわれて困ったように引きつった笑みを浮かべる。
すると、永斗さんが英字新聞をテーブルに置いた。
「今日は午前中の接待が終わったら昼過ぎに一度家に帰ってくる。そのときにパーティーの為の打ち合わせをしたい。それを終えたら社内会議があるから夕方にはまた会社に戻る」
「今日も忙しいんですね……」
朝方まで仕事をしていたのに今日もスケジュールが詰まっているなんて。
あまりにも忙しそうで永斗さんの体が心配になる。
「なんだ、寂しいのか?」
「ち、違います!ただ、永斗さんが体調を崩さないか心配で……」
「体力は人一倍ある。問題ない」
永斗さんは私が食べ始めて少しすると席を立った。
「悪いが行ってくる」
「……はい!」
ビジネスバッグを手に歩きだす永斗さんの後姿を追いかける。
「まだ食事途中だろう。どうしたんだ」
「え……、お見送りを……」
「見送り?」
「はい。お仕事に行く永斗さんを車まで見送ろうと思って」
両親が亡くなる前、母は毎朝父を玄関先まで送っていき『いってらっしゃい』と笑顔で手を振っていた。
永斗さんが車に乗り込み私は「いってらっしゃい」と声をかけた。
パワーウィンドウが開き、永斗さんが顔を覗かせる。
「いってくる。昼は寿司を出前してもらうように手配しておいた」
「お寿司!ありがとうございます……!」
ニューヨークでお寿司が食べられるなんて!
笑顔でお礼を言うと、扉が閉まり車が発進した。
永斗さんはもうきっと見ていない。
それでも私は車が見えなくなるまでブンブンと手を振り続けた。
眠い目を擦りながらダイニングへ足を踏み入れる。
「沙羅様、おはようございます」
「おはよう」
マリアの笑顔で迎え入れられたとき、ある事に気が付いた。
テーブルには優雅にコーヒーを飲みながら英字新聞を読む永斗さんが座っていた。
「え、永斗さん!?な、なんで……!?」
「何を驚いているんだ。お前が朝食を一緒に食べろを言ったんだろう」
呆れた口調の永斗さんに言葉がでない。
確かに言った。言ったけど――。
「まさか本当に食べてもらえるなんて思ってなくて……。遅れてすみません」
慌てて席に着くとマリアが嬉しそうに微笑んだ。
「お二人って、いつの間にそんなに仲良くなったんですか?もしかして昨日の夜、何かありました?」
その言葉に昨日の出来事が脳裏をかすめる。
「ち、違う。そんなんじゃなくて――」
「その慌てぶりが余計に怪しいです。それに昨日の試着室での様子も変だったし」
「ま、まさか!ない!何もないの!!本当よ!」
「怪しすぎます」
マリアにからかわれて困ったように引きつった笑みを浮かべる。
すると、永斗さんが英字新聞をテーブルに置いた。
「今日は午前中の接待が終わったら昼過ぎに一度家に帰ってくる。そのときにパーティーの為の打ち合わせをしたい。それを終えたら社内会議があるから夕方にはまた会社に戻る」
「今日も忙しいんですね……」
朝方まで仕事をしていたのに今日もスケジュールが詰まっているなんて。
あまりにも忙しそうで永斗さんの体が心配になる。
「なんだ、寂しいのか?」
「ち、違います!ただ、永斗さんが体調を崩さないか心配で……」
「体力は人一倍ある。問題ない」
永斗さんは私が食べ始めて少しすると席を立った。
「悪いが行ってくる」
「……はい!」
ビジネスバッグを手に歩きだす永斗さんの後姿を追いかける。
「まだ食事途中だろう。どうしたんだ」
「え……、お見送りを……」
「見送り?」
「はい。お仕事に行く永斗さんを車まで見送ろうと思って」
両親が亡くなる前、母は毎朝父を玄関先まで送っていき『いってらっしゃい』と笑顔で手を振っていた。
永斗さんが車に乗り込み私は「いってらっしゃい」と声をかけた。
パワーウィンドウが開き、永斗さんが顔を覗かせる。
「いってくる。昼は寿司を出前してもらうように手配しておいた」
「お寿司!ありがとうございます……!」
ニューヨークでお寿司が食べられるなんて!
笑顔でお礼を言うと、扉が閉まり車が発進した。
永斗さんはもうきっと見ていない。
それでも私は車が見えなくなるまでブンブンと手を振り続けた。