7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
「始めよう」
定時となりリモートで社内会議に参加する。
各部署の状況や案件の進捗状況、抱えている問題などを報告し合う。
全体の社内会議は定期的に行っている。報告や連絡を徹底することで組織の方向性を全員で共有することができる。
『2021年のGDPはプラス推移となっています。またGDPの連動により、原油の需要が大幅に上がっています』
「なるほど。高い成長率を保っていればしばらくは原油価格が大きく落ち込むリスクは少ないということだな」
『はい。その通りです』
手元の書類に目を通す。周りの人間は俺を石油王だと称賛するが、そんなに偉いものではない。
父が大富豪だからといってその地位にあぐらをかくことだけはしたくなかった。
この地位を得る為に死に物狂いで努力をした。その結果がようやく実を結んだというだけだ。
「だが、安心はできない。世界的にガソリン車から電気自動車などの低環境負荷の自動車へシフトする動きだ。燃料需要が減少すればわが社にも向かい風になる」
『ええ……』
「その点をどう考えているのか、君たちの意見を聞かせてくれ」
社員たちの表情が曇る。
そのとき、画面の中で一人だけ視線が常に下を向いている人物に気がついた。
「テーブルの下でスマホをいじる余裕があるボブ、君の意見は?」
他社で優秀な成績を残している人物をヘッドハンティングしてきても結果を残せない人間は多くいる。
自分の立場に甘え手を抜こうとする。
ボブは慌てて顔を上げた。俺がその場にいないからといって手を抜くことは許さない。
『そ、それでしたら次までに考えをまとめて――』
「いや、今聞きたい」
大画面スクリーンに映る俺の顔を社員たちはギョッとしたように見つめる。
「何を驚いている。ただ、意見を聞かせて欲しいと頼んでいるだけだろう」
『すみません……』
「隣のデイビット、君はどう考える」
ボブの隣の席に座っている営業部門のデイビットに話を振ると、彼はビクッと体を震わせた。
営業職を得意としないのか仕事熱心な割に結果を出せていない。
そのせいで部内では肩身の狭い思いをしている様子だ。
『社長、デイビットにそういうことを聞くのは時間の無駄かと』
営業成績トップのサムが呆れたように言う。
「君の意見は聞いていない。私はデイビットの話を聞きたいんだ」
画面に映るデイビットが不安そうに視線を持ち上げた。
「聞かせてくれ」
『……石油化学製品は引き続き需要も大きいと考えられますが……』
「が?」
『今後燃料以外の事業分野や再生可能エネルギー分野への移行も一つの手かと。選択肢を多く持つことによりリスクの分散にも繋がると考えます』
デイビットの意見に会議室内がザワザワとうるさくなる。
『移行だと……!?営業の分際で分かったようなことを言うな……!』
社内には保守的な意見の人間が多い。現状を維持したいという声も少なくない。
役員たちは顔を赤らめて怒りを露にした。
「デイビット」
大ブーイングを浴びたデイビットは俯き顔を青ざめさせている。
「君には今日限りで営業部を辞めてもらう」
『え……?』
周りの人間はデイビットをあざ笑うような笑みを浮かべる。
「君は営業には向いていない」
『……はい』
「だから、君の能力の生かせる部署へ異動してもらう」
『異動ですか……?』
「そうだ。新しい事業分野の展開は私も以前から考えていた。その企画、立案を君に任せよう。詳しい話はあとでだ。期待している」
その言葉に会議室にいた全員が言葉を失う。
「今日の会議は以上だ。分かっていると思うが、これは決定事項だ。文句を言うなら私に言え。もし守らない人間は私に刃向かったものと認識する。そのつもりでいてくれ」
画面を切り息を吐くと同時に会議に参加していた役員から電話がかかってきた。
勝手に話を進めたことに対して相当お怒りのようだ。
電話を無視し、再び仕事にとりかかろうとしていた時「んっ……」かすかな声が耳に届いた。
定時となりリモートで社内会議に参加する。
各部署の状況や案件の進捗状況、抱えている問題などを報告し合う。
全体の社内会議は定期的に行っている。報告や連絡を徹底することで組織の方向性を全員で共有することができる。
『2021年のGDPはプラス推移となっています。またGDPの連動により、原油の需要が大幅に上がっています』
「なるほど。高い成長率を保っていればしばらくは原油価格が大きく落ち込むリスクは少ないということだな」
『はい。その通りです』
手元の書類に目を通す。周りの人間は俺を石油王だと称賛するが、そんなに偉いものではない。
父が大富豪だからといってその地位にあぐらをかくことだけはしたくなかった。
この地位を得る為に死に物狂いで努力をした。その結果がようやく実を結んだというだけだ。
「だが、安心はできない。世界的にガソリン車から電気自動車などの低環境負荷の自動車へシフトする動きだ。燃料需要が減少すればわが社にも向かい風になる」
『ええ……』
「その点をどう考えているのか、君たちの意見を聞かせてくれ」
社員たちの表情が曇る。
そのとき、画面の中で一人だけ視線が常に下を向いている人物に気がついた。
「テーブルの下でスマホをいじる余裕があるボブ、君の意見は?」
他社で優秀な成績を残している人物をヘッドハンティングしてきても結果を残せない人間は多くいる。
自分の立場に甘え手を抜こうとする。
ボブは慌てて顔を上げた。俺がその場にいないからといって手を抜くことは許さない。
『そ、それでしたら次までに考えをまとめて――』
「いや、今聞きたい」
大画面スクリーンに映る俺の顔を社員たちはギョッとしたように見つめる。
「何を驚いている。ただ、意見を聞かせて欲しいと頼んでいるだけだろう」
『すみません……』
「隣のデイビット、君はどう考える」
ボブの隣の席に座っている営業部門のデイビットに話を振ると、彼はビクッと体を震わせた。
営業職を得意としないのか仕事熱心な割に結果を出せていない。
そのせいで部内では肩身の狭い思いをしている様子だ。
『社長、デイビットにそういうことを聞くのは時間の無駄かと』
営業成績トップのサムが呆れたように言う。
「君の意見は聞いていない。私はデイビットの話を聞きたいんだ」
画面に映るデイビットが不安そうに視線を持ち上げた。
「聞かせてくれ」
『……石油化学製品は引き続き需要も大きいと考えられますが……』
「が?」
『今後燃料以外の事業分野や再生可能エネルギー分野への移行も一つの手かと。選択肢を多く持つことによりリスクの分散にも繋がると考えます』
デイビットの意見に会議室内がザワザワとうるさくなる。
『移行だと……!?営業の分際で分かったようなことを言うな……!』
社内には保守的な意見の人間が多い。現状を維持したいという声も少なくない。
役員たちは顔を赤らめて怒りを露にした。
「デイビット」
大ブーイングを浴びたデイビットは俯き顔を青ざめさせている。
「君には今日限りで営業部を辞めてもらう」
『え……?』
周りの人間はデイビットをあざ笑うような笑みを浮かべる。
「君は営業には向いていない」
『……はい』
「だから、君の能力の生かせる部署へ異動してもらう」
『異動ですか……?』
「そうだ。新しい事業分野の展開は私も以前から考えていた。その企画、立案を君に任せよう。詳しい話はあとでだ。期待している」
その言葉に会議室にいた全員が言葉を失う。
「今日の会議は以上だ。分かっていると思うが、これは決定事項だ。文句を言うなら私に言え。もし守らない人間は私に刃向かったものと認識する。そのつもりでいてくれ」
画面を切り息を吐くと同時に会議に参加していた役員から電話がかかってきた。
勝手に話を進めたことに対して相当お怒りのようだ。
電話を無視し、再び仕事にとりかかろうとしていた時「んっ……」かすかな声が耳に届いた。