7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
「永斗に女の影はなかった!そんなのすべてでたらめだ!」

「本当です。私はすでに彼と一緒にこの家で暮らしています」

半分本当で半分嘘。私は淀みなく言い切った。

「なっ……!」

目を吊り上げた海さんは最初の穏やかな印象とはまるで別人のようだった。

「どうせ偽装だろう!?親父から会長職を引き継ぐためだけにそんな真似を……。会長職に就いたら僕を追い出す計画だな……。くそっ、永斗の奴汚い真似しやがって。……絶対に許さない!!」

海さんの怒りは相当のようだ。目を血走らせてワナワナと唇を震わせる海さんに恐怖すら覚える。

「なぁ、沙羅。僕と取引をしよう。永斗にはいくらもらう予定なんだ?」

「え……?」

「その倍……、いや、その3倍の額を出す。その金を持って永斗の前から今すぐ姿を消してくれ」

「そんなことできません……!」

「分かった。5倍にしてやろう。それなら文句はない?」

海さんは必死の形相でそう繰り返す。でも私は首を立てに振らなかった。

「できません!私は……」

「私はなんだ?」

「永斗さんを愛しています」

そんなことを言うつもりはなかったのに、自然と零れ落ちていた。

言ってから気付いた。私は……永斗さんをこんなにも愛してしまったんだと。


「沙羅……、君はずいぶん演技が上手いな。さすが永斗が選んだ女だけある」

「……ちがっ、海さんが永斗さんを悪く言うから……」

「演技ではなく本気だと……?それなら、なおさらのこと。永斗から手を引け」

「どういう……意味ですか?」

「今度のパーティで君を婚約者だと紹介して外堀を埋めようとしているんだな?そして、父さんをうまく丸め込み会長職を自分のものにする。永斗の考えることは手に取る様にわかる」

全てを知っているというような口ぶりに言い返す言葉もない。

「沙羅、今すぐ日本に帰るんだ。もし、パーティに出席したら僕にも考えがある」

「考え……?」

「じきに分かる。これは警告だ」

私がパーティに参加すれば、永斗さんの身に何かが起きる?

海さんはそう言いたいのだ。一体、何を企んでいるの……?

彼の言動に危うさを覚える。

すると、今度は一転してヘラっとした笑みを浮かべる。

「よく見ると君は可愛い。永斗なんてやめて僕の女にならないか?」

「え……?」

「永斗が認めた女なら僕も味見してみたい。いいだろう?」

海さんはそう言うと、じりじりと近付いてくる。私は思わず後ずさりした。

一歩、二歩、このままじゃ彼から逃れられない。

「――やめて!」

海さんが私の頬に触れようと手を伸ばす。

絶対絶命のピンチに思わずギュッと目をつぶると、パシンッという乾いた音がした。

「――沙羅に触れるな。一本でも触れれば、お前をロバートグループから追い出してやる」

聞き覚えのある声に恐る恐る目を開くと、そこには怒りに目を吊り上げた永斗さんが立っていた。
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