7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
第五章 溢れ出る愛
「……えっ!?パーティってこの家の中でするんですか!?」
翌日、早朝から大勢の人間が入り乱れるように家の中へ入ってきてパーティの準備を始めた。
「そうだ。300人程度の規模だし問題ないだろう」
「さ、300人!?てっきりどこか違う会場でやるものかと……」
「当初の予定ではホテルを貸し切って行う予定だった。だが、急きょこの家でやることにしたんだ」
「どうしてですか?」
「ホテルでは緊張するだろう?それに、この家なら沙羅も少しは勝手が分かるだろう」
それって……私の為に?
「すまないが、用事があって少し離れる。今日は頼むぞ」
「分かりました。私なりに精一杯頑張ります」
「――大丈夫だ、普段通りの沙羅でいい。それと、パーティの前に先に父に会わせたい。気持ちの準備をしておいてくれ」
永斗さんはそう言い残して大広間から出て行った。
約束通り午前中に日本大使館へ行き、再発行してもらったパスポートを受け取った。
車内でまじまじとパスポートに視線を落とす。
もしあの日、バッグを盗まれていなければ今私はここにはいなかったんだ。
「沙羅様、どうしましたか?」
マリアに声をかけられて顔を持ち上げる。
「なんか寂しくなってきちゃって」
「どうしてですか?」
「パスポートも手元にあるし、いつだって日本に帰れるってホッとする気持ちもあるの。だけど、もうすぐお別れなんだなって……」
「沙羅様……もしかして永斗様のこと……?」
私はマリアに微笑んだ。
「もしそうだとしても、私達に未来はないから。私は日本に帰って結婚する。最初からその予定だったの」
「えっ!?お付き合いしているお相手がいたんですか!?」
マリアが驚愕の声を上げる。
「違うの。私、男の人と付き合ったことないの。お相手は1回しか会ったことのないお見合い相手だし」
今までのことを話すと、マリアが顔をしかめた。
「……愛のない結婚をするんですか?」
「え?」
「一度離婚している私が言うのもおこがましいことですが、愛がなければ結婚生活は長続きしません」
マリアはそっと私の手を握った。
「私の結婚も愛のないものでした。幼い頃に父を亡くして苦労していた母を見ていたからお金持ちの男性と結婚したんです。自分の気持ちを押し殺して母の為に。母にとって一番いい選択をしたと思い上がっていました」
「マリア……」
「でも、間違いだった。確かに豊かな生活を送れた時期もありました。でも、それは一時的なものでした……。浮気、ギャンブルに走る夫に精神的に疲れていたとき母に言われたんです。『あなたは今どうしたいの?自分の気持ちに正直になりなさい』って」
マリアはすがるような目を私に向けた。
「沙羅、あなたの家族は本当にそれを望んでいるの?お願い、私と同じ道を歩まないで。これはあなたの付き人としてじゃなく、あなたの友達としてのアドバイスよ」
「マリア……」
敬語ではなく本心で私にぶつかってきてくれたマリアに感情がこみ上げてくる。
「ありがとう……、マリア。まさかアメリカでこんなに素敵な友達ができるなんて思ってもみなかった」
「ダメよ、沙羅。泣いちゃダメ。笑うの!沙羅の笑顔が私は大好きよ」
自分の気持ちに……素直に……。
目を潤ませる私にマリアはニコッと笑って背中を摩ってくれた。
昼食を済ませて家に帰ると、室内はパーティの準備が進められていた。
「パーティの開始は19時からを予定しています。沙羅様、それまでに準備をしましょう」
部屋に入ると、一流のヘアメイクアーティストやスタイリストが勢ぞろいしていた。
「さあ、まずはヘアメイクから。さらにお綺麗になった沙羅様を見て永斗様がどんな反応をするか今から楽しみです」
楽しそうなマリアとは対照的に私は緊張と不安で押しつぶされそうになっていた。
何度も深く息を吐きだし気持ちを落ち着かせようとする。
あと数時間ほどで招待客でこの家はいっぱいになる。
そして、私は彼のフィアンセとして振舞う。
――大丈夫だ。
永斗さんの言葉が脳裏に蘇る。
ギュッと目をつぶる。永斗さんの力強い声が胸の中に温かく染み渡り、魔法のように私の心を軽くしてくれた。
翌日、早朝から大勢の人間が入り乱れるように家の中へ入ってきてパーティの準備を始めた。
「そうだ。300人程度の規模だし問題ないだろう」
「さ、300人!?てっきりどこか違う会場でやるものかと……」
「当初の予定ではホテルを貸し切って行う予定だった。だが、急きょこの家でやることにしたんだ」
「どうしてですか?」
「ホテルでは緊張するだろう?それに、この家なら沙羅も少しは勝手が分かるだろう」
それって……私の為に?
「すまないが、用事があって少し離れる。今日は頼むぞ」
「分かりました。私なりに精一杯頑張ります」
「――大丈夫だ、普段通りの沙羅でいい。それと、パーティの前に先に父に会わせたい。気持ちの準備をしておいてくれ」
永斗さんはそう言い残して大広間から出て行った。
約束通り午前中に日本大使館へ行き、再発行してもらったパスポートを受け取った。
車内でまじまじとパスポートに視線を落とす。
もしあの日、バッグを盗まれていなければ今私はここにはいなかったんだ。
「沙羅様、どうしましたか?」
マリアに声をかけられて顔を持ち上げる。
「なんか寂しくなってきちゃって」
「どうしてですか?」
「パスポートも手元にあるし、いつだって日本に帰れるってホッとする気持ちもあるの。だけど、もうすぐお別れなんだなって……」
「沙羅様……もしかして永斗様のこと……?」
私はマリアに微笑んだ。
「もしそうだとしても、私達に未来はないから。私は日本に帰って結婚する。最初からその予定だったの」
「えっ!?お付き合いしているお相手がいたんですか!?」
マリアが驚愕の声を上げる。
「違うの。私、男の人と付き合ったことないの。お相手は1回しか会ったことのないお見合い相手だし」
今までのことを話すと、マリアが顔をしかめた。
「……愛のない結婚をするんですか?」
「え?」
「一度離婚している私が言うのもおこがましいことですが、愛がなければ結婚生活は長続きしません」
マリアはそっと私の手を握った。
「私の結婚も愛のないものでした。幼い頃に父を亡くして苦労していた母を見ていたからお金持ちの男性と結婚したんです。自分の気持ちを押し殺して母の為に。母にとって一番いい選択をしたと思い上がっていました」
「マリア……」
「でも、間違いだった。確かに豊かな生活を送れた時期もありました。でも、それは一時的なものでした……。浮気、ギャンブルに走る夫に精神的に疲れていたとき母に言われたんです。『あなたは今どうしたいの?自分の気持ちに正直になりなさい』って」
マリアはすがるような目を私に向けた。
「沙羅、あなたの家族は本当にそれを望んでいるの?お願い、私と同じ道を歩まないで。これはあなたの付き人としてじゃなく、あなたの友達としてのアドバイスよ」
「マリア……」
敬語ではなく本心で私にぶつかってきてくれたマリアに感情がこみ上げてくる。
「ありがとう……、マリア。まさかアメリカでこんなに素敵な友達ができるなんて思ってもみなかった」
「ダメよ、沙羅。泣いちゃダメ。笑うの!沙羅の笑顔が私は大好きよ」
自分の気持ちに……素直に……。
目を潤ませる私にマリアはニコッと笑って背中を摩ってくれた。
昼食を済ませて家に帰ると、室内はパーティの準備が進められていた。
「パーティの開始は19時からを予定しています。沙羅様、それまでに準備をしましょう」
部屋に入ると、一流のヘアメイクアーティストやスタイリストが勢ぞろいしていた。
「さあ、まずはヘアメイクから。さらにお綺麗になった沙羅様を見て永斗様がどんな反応をするか今から楽しみです」
楽しそうなマリアとは対照的に私は緊張と不安で押しつぶされそうになっていた。
何度も深く息を吐きだし気持ちを落ち着かせようとする。
あと数時間ほどで招待客でこの家はいっぱいになる。
そして、私は彼のフィアンセとして振舞う。
――大丈夫だ。
永斗さんの言葉が脳裏に蘇る。
ギュッと目をつぶる。永斗さんの力強い声が胸の中に温かく染み渡り、魔法のように私の心を軽くしてくれた。