7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
だけど、やっぱり車に乗ることはできない。

「……やっぱり車には乗れません。一人で何とかします」

ハッキリ断ると、男性は不服気に眉間に皺を寄せた。

「なるほど。それならこちらにも考えがある」

「どういう意味ですか?」

「車に乗らないというならさっきの親子を連れ戻す。そうなれば、お前は警察で子供を誘拐したと訴えられることになるだろう」

「そんな……!私を脅す気ですか……!?」

「俺はお前を助けただろう。その見返りが欲しい」

「見返りって……。私をどこかへ売りさばくんじゃ……」

「そんなことはしない」

男性は私の背中を押して無理矢理車に押し込んだ。

「や、やめて!!警察呼びますよ!?」

「呼べるものなら呼べばいい」

この人は知っている。私に警察を呼ぶ手段がないことを。

「誰か――!!助け――」

「悪いようにはしないから安心しろ」

必死に車から出ようと抵抗すると、男性が私の隣に座った。

自動で扉が閉まり、車がなだらかに走り出す。

「こっちにいる間、金と住む場所が必要だろう?」

「そうです。それなので、まず警察署に――」

「俺がお前の面倒を見よう。金も住む場所もすべて提供する。その代り、してもらいたいことがある」

「してもらいたいこと?」

「こっちにいる間だけ俺のフィアンセの振りをするんだ。そして、フィアンセとしてパーティに参加して欲しい」

「は!?意味がさっぱり分かりません……!」

「詳しい話はあとだ」

男性はそう言うと、私から距離を取りノートパソコンを起動させた。

「ロバート・アオヤマ・エイトだ。アメリカ人の父と日本人の母とのハーフだ。永斗でいい」

やっぱりそうか。だから瞳の色がグレーだったんだ。

「お前の名前は?」

「柏木沙羅です」

「どういう字だ。住んでいる場所は?」

尋ねられバカ正直に自分の名前と住所を教えてしまってから後悔する。

「お、お願いします、その辺に捨てないでください……!本当にそれだけは……」

「傷付けたりはしない。約束する」

私の心配をよそに、男性は取り出したミネラルウォーターを私に差し出した。

「日本からのフライトで疲れただろう。少し休め」

「ありがとうございます……」

と答えてはみたものの、休めるはずもない。

ペットボトルを恐る恐る受け取る。まさかこの中に危険な薬が入ってるなんてことは――。

そして、寝ている間にどこかへ売られて……。

「何も入れていない」

私の心を察したように言うと、男性は真剣な表情でパソコン画面を見つめた。
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