7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
予定よりも早く帰国した私に叔父と叔母、それに妹たちは驚いていた。

そしてなにより、持っていった荷物を一切持たずに手ぶらで帰宅した私を心底心配していた。

「ねぇ、お姉ちゃん。ニューヨークはどうだった?やっぱりイケメンが大勢いるの?」

久しぶりに我が家のソファでくつろいでいると、妹の茜が私の隣に腰を下ろした。

その目はキラキラと輝いている。

「そうだね。いるにはいるかもね」

「やっぱり!?いいなぁ~、お姉ちゃん。うちが大金持ちなら高校卒業してすぐアメリカに留学するのに」

「茜、小学生の時からアメリカに行きたいって言ってたもんね。やっぱり今でも留学したい気持ちは大きいの?」

「まあね。将来の夢は通訳だから。だけど、現実的じゃないよね。分かってるよ」

肩をすくめておどけてみせる茜の気持ちが手に取る様に分かる。

茜も今の経済状況を理解しているんだ。

「茜……」

「いいのいいの。高校卒業したらあたしも働くつもりだし」

「でも、大学に通って通訳の勉強をしたいんじゃないの?」

「したい気持ちはあるけど、無理だもん。だから、お姉ちゃんも無理して結婚しようとか考えなくていいよ?」

「え……?」

「お姉ちゃんのお見合い相手、あたしどうも好きになれなくてさ」

「ちょっ……―ー茜?」

「テスト近いから勉強してくるね」

茜はリビングを出ると、階段を駆け上がっていった。

……茜は気付いていたんだ……。私が結婚しようとしている理由を。

「ハァ……」

私は目をつぶってため息をついた。

心も体も疲れ果てていた。

あまりにも突然、色々なことが起こったせいで頭がついていかない。

重たい体を引きずって自分の部屋に入りベッドの上にダイブする。

明日、起きたら新しいスマホを買いに行こう。

そのあと、ドラッグストアに寄って少なくなったメイク落としも買おう。

出かけたついでに駅の近くのお饅頭屋さんにも立ち寄って、叔父たちと妹たちにお土産を買おう。

一週間近く家を空けていたから、家の中も汚れている。

この家の掃除担当は私だ。留守にしていた分溜まってしまった汚れを一日がかりで綺麗にしよう。

忙しくしていれば、永斗さんのことを考えずに済む。

目をつぶると私はあっという間に夢の世界に落ちていった。
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