7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
「もしもまだロバートグループの一員でいたいなら父に頭を下げて便宜を図ってもらうんだな。だが今度は経営陣ではなく、平社員としてやり直すんだ」

「僕が平社員!?ふざけるのもいい加減にしろ!長男だからって何でも許されると思ったら大間違いだぞ!!」

「海、ここへ座れ」

「ゆっくり座って話ができるほど僕は冷静じゃない!」

「――いいから座れ!」

一喝すると、海は渋々ながらもガラステーブルを間に俺と向かい合う様に座った。

ハァと息を吐きだす。

そして、気持ちを落ち着かせると俺は海に言った。

「こうやって向かい合って話すのは何年ぶりだろうな」

「なんだよ、急に」

海が困惑したように言う。

「お前が卑屈になる気持ちも分かる。父も周りの人間も長男である俺に過度な期待をしていたし、俺もそれに応えようと必死に努力した。でも、その努力は自分の為でもありロバートグループの為だ」

「なんだよ、今度は自慢話か?分かってる……!僕のことなんて誰も期待していなかった!どんなに努力しても永斗には絶対にかなわない。永遠に挫折を味わう僕の気持ちなんてお前には理解できないだろう!?」

「だったら海、お前はどうなんだ?俺の気持ちも理解できないだろう?」

「どういう意味だ……?」

「俺には父の跡を継ぐという未来しかなかった。全てをその為に捧げてきた。だが、お前は違う。海……お前がやりたいことは金融会社のお飾りのトップでいることか?」

「……っ、何が言いたいんだ」

海は困惑したように眉間に皺を寄せて視線を漂わせる。

「お前はファッションデザイナーに興味があるんじゃないのか?」

「どうしてそれを……?」

動揺しているのか、海の目が左右に小刻みに揺れる。

「沙羅が言っていた。海が嬉しそうに話していたって。そのとき思った。無理にロバートグループにしがみつく必要はないと。お前はお前のやりたいことをやったらいい」

「そんなこと……今さらできるわけがないだろう……」

「決めつけるな。それに、今のお前のデスクをみれば一目瞭然だ」

机にはデザインのラフ画が大量に山積みになっていた。
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