7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
「俺は今までお前を避けてきた。腫物扱いしてきたことも認める。お前をどうやって扱ったらいいのか分からなかったんだ。幼い頃からお前は俺と違って感情を表に出すのが得意だったからな」

すぐに泣き、怒り、笑う。

表情豊かな海が両親に可愛がられているのを見ると幼心に寂しい気持ちになったものだ。

「海、お前は俺にかなわないと言ったがそれも違う。俺は自分の気持ちに正直で甘え上手なお前が羨ましかった」

「俺が羨ましい……?」

「社内にはお前のことを暴君という人間も確かにいる。だが、俺よりも気さくで話しやすいという声もある」

海には感情的になりやすいという欠点がある。だが、コミュニケーション能力は俺よりもずっと高い。

「急になんなんだよ……。そんなに僕をロバートグループから追い出したいのか?」

「そうじゃない。俺は……ーー」

そこまで言って言葉を切る。

沙羅が言っていた。気持ちは口にしないと伝わらないと。

それを教えてくれたのは沙羅だ。手にじんわりと汗をかく。

大人になってからこうやって海と二人っきりで言葉を交わしたことはない。

「俺は、なに?」

海が怪訝そうな表情で俺の顔を覗き込む。

このまま黙って引き下がってしまえば、きっと同じことの繰り返しだ。

俺は意を決して海の目を見た。

「俺は……お前の絵がそれなりに好きだ。昔から温かくて優しいいい絵を描くだろ。だから、デザインも勉強して努力を続ければきっと結果がでる」

「なっ……」

「それに……俺は兄として弟のお前のことを大切に思っている。今まで、これから先もずっと。それだけは覚えていてくれ」

「な、なんだよ、それ……。こんなときにそんなこと言うのズルいだろ……!!」

「沙羅に言われたんだ。気持ちは言葉にしないと伝わらないと」

「本気でそう思ってくれているのか……?俺をロバートグループから追い出す気じゃなかったのか?」

「例えロバートグループからお前を追い出すことになっても、ロバート家から追い出すことはしない。お前はずっと俺の家族だ。そうだろう?」

海がおもむろに顔を背けて鼻をすする。

「お前、泣いているのか?」

「違う!そんなわけあるか!」

「分かりやすい奴だな」

フッと笑う俺を海は横目でにらむ。

まさかこんな風に海と言葉を交わす日がくるなんて思ってもみなかった。

これも全て……沙羅のおかげだ。
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