7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
少しの間、静かな室内に海が鼻をすする音だけが響いた。
「……悪かった。今まで……散々迷惑をかけてすまない」
海は赤らんだ目で俺を見ると、小さく頭を下げて謝った。
「昨日自転車に跳ねられただろ?あれも僕の指示だ。でも、ぶつかれとは言っていないんだ。脅かしてくれって頼んだだけで……」
「もういい。大したケガではなかったし、沙羅は無事だったからな。もし沙羅が傷付けられていたら、俺は一生お前を許せなかった」
「……ああ。沙羅にも酷いことをしたと思ってる。永斗が考えている通りだ。俺は強制的に沙羅を日本に帰した」
「やはりそうか」
沙羅が俺やマリアに別れを告げずに自分の意思で日本に帰ったわけではないことがこれではっきりした。
「あの日、別れ際に沙羅に言われたよ。『永斗さんは海さんのことを大切に想っています。今も、昔もずっと』って」
「沙羅がそんなことを?」
「ああ。それに、沙羅はあんなに酷いことをした僕に言ってくれたんだ。『海さんのことは好きじゃないけど、海さんの描いたデザインは好きです。いつかまた会えたら、私の服をデザインしてくださいね』って」
「……ダメだぞ、海。沙羅だけは絶対に譲れない」
海の考えていることが手に取る様に分かり、俺は海をけん制した。
「分かってるって。それにしても、永斗は良い子を見つけたね」
「当たり前だ。俺の目に狂いはない」
あの日、初めて会ったあの時に自分でも気付かぬうちに俺は沙羅に心を奪われていたんだ。
そして、今も心の底から強く沙羅が欲しいと願っている。
俺達が出会ったのは運命だったとしか考えられない。
「海、今回のことは大目に見てやる。その代り二度と沙羅に手を出すな。分かったな?」
「……ああ、約束する。沙羅を愛しているのか……?」
「当たり前だ」
ハッキリと答えた瞬間、ポケットの中に入れて置いたスマホが音を立てて震えた。
それは沙羅に渡しておいたサブのスマートフォンだった。
ディスプレイには見覚えのない番号が表示されている。
心臓がおかしくなりそうなほど大きな音を立てて鳴りだした。
「――沙羅!!」
俺はスマホを耳に当てて愛しい人の名前を叫んだ。