7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
車を走らせること数十分、信じられないほどの大きさの豪邸の前で停まった。
家の前に着くまでに庭には2つの大きなプールとゴルフ施設があることも分かった。
広い敷地は徒歩で移動することは不可能なぐらいの大きさだ。
「入れ」
ガレージで車を降りると、直通の入り口から中に入る。
洋風な造りのお洒落な家に足を踏み入れた瞬間、あまりの煌びやかさに倒れそうになった。
フォーマルな仕様の広大なリビングルームには明らかに高価そうなテーブルやソファが置かれている。
部屋のあちこちに飾られたキラキラと輝く調度品は目が飛び出るぐらい高いに違いない。
その場に呆然と立ち尽くしている私にソファに座る様に指示を出すと、永斗さんはテーブルに向かい合うように座った。
「今週、大規模なパーティがある。そのとき、俺のフィアンセとしてお前を紹介する」
「私がフィアンセに……?婚約者ということですか?」
「そうだ。沙羅は適役だ」
満足そうな永斗さんに困惑する。
「待ってください!私、そんなことできません……!!」
「安心しろ。婚姻届を出そうとしているわけではないし、お前の戸籍が汚れる心配はない」
「そういうことではありません!」
「何が不満なんだ」
腕を組み私を見下ろす永斗さん。
「私が永斗さんのフィアンセの振りをしなくてはならない理由が分かりません」
この家や車を見る限り、永斗さんは私とは違う世界を生きている人のようだ。
そんな人がどうして私なんかにフィアンセの振りを頼むのか理解ができない。
「理由なんて知らなくてもいい。ただ、パーティの時だけフィアンセの振りをすればいいんだ。そうすればお前の衣食住は全て俺が面倒をみよう」
「できません!」
「何が不満なんだ」
「お金ですべて解決しようとするところです!!」
永斗さんとお見合いをした北条さんがかぶって見えた。
お金に物をいわせれば相手をすべて思いのままにできると思っているんだろう。
私はこれといって取柄もない。
だけど、私にだって人としてのプライドや自尊心はある。それをないがしろにされれば黙っていられない。
「普通の女は俺のフィアンセになれたら泣いて喜ぶぞ。それなのに、お前は変わった女だ」
「確かに永斗さんはお金持ちかもしれません。でも、だからといってすべてが思い通りにいくなんて思わないでください。人の気持ちはお金では買えません!」
「俺に言い返すなんてなかなか筋のある奴だ。さらにお前が気に入った。顔も整っているし、スタイルもいい。それに、英語も話せて……なにより日本人だ」
「だから、無理です!!私にはできません……!」
どんなに断っても永斗さんは涼しい表情を浮かべている。
「沙羅が日本に帰るのはいつだ?」
「一週間後です」
「なるほど。だが、残念なことにパスポートも帰りのチケットも盗まれて帰ることができなくなってしまったわけだな」
「うっ……」
痛いところを突かれた。
確かにこのままでは予定通りに日本に帰ることはできそうもない。
まずは警察に届けを出してそれから日本大使館に連絡してパスポートを再発行してもらってから帰りのチケットを取る。
まだ来たばかりだというのにもう帰りの心配をしなくてはならないなんて。
本来ならば今頃、ロックフェラー・センターでショッピングを楽しんでいたはずなのに……!
「パスポートは一週間もあれば再発行は可能だ。心配するな。お前は予定通り日本へ帰れる」
「えっ、そうなんですか……?」
思わず顔を持ち上げると、永斗さんは全てを見透かしたように私を見つめた。
「もちろんそれは俺が手を貸せば、の話だ」
「交換条件っていうことですか……?」
「そういういうことだ」
私は唇をギュッと噛みしめた。
パーティで偽りのフィアンセを演じることなんて絶対に嫌だ。
それに、そんなことを赤の他人の私に頼むということは相当ワケアリに違いない。
そんなことを安請け合いしてはいけないと分かってはいる。
だけど正直、今私が縋りつける人は目の前のこの人しかいない。
そもそも車に乗ってしまったのが運の尽きだった。
もしここで彼の頼みを断れば一週間後どころか日本に帰れるのかさえ分からない。
それに、私にはどうしても10日後までに日本に帰らなければいけない理由がある。
『あなたと結婚します』
不本意ながら北条さんにそう伝えなくてはならない。
もしも帰れず約束を反故にすれば、叔父たちに多大なる迷惑をかけることになってしまう。
「どうする?」
私の気持ちを全て見透かしているような灰色の瞳が真っすぐ向けられる。
「……分かった。旅館に資金援助をしよう」
「え……!?」
まるで叔父たちの経営する旅館を知っているような口ぶり。
「まさか私のこと……調べたんですか?」
「当たり前だろう。お前がどんな人間か調べたうえでフィアンセの振りをするように頼んでいるんだ」
背筋が凍り付く。
この人は自分の目的を達成するためには手段を選ばない。
車内でパソコンをいじっていたのも私の素性を調べるためだったのかもしれない。
「悪い話ではないと思うぞ?」
この人が信頼に値するかも分からない。
口だけなら何とでも言える。だけど、今私はどうしようもなく無力なのだ。
「……分かりました。お手伝いします」
私の言葉に永斗さんは満足げに頷いた。
「賢明な判断だ。明日、警察と日本大使館へ連れて行くように手配をしておく。そのときにパスポートの再発行もすればいい」
「……よろしくお願いします」
小さく頭を下げると、これからの生活について説明を受けた。
「お前がここにいる間の金は全て俺が出す。お前専用の運転手も用意しよう。俺が指示を出した時間以外は自由だ。行く予定だった観光スポットを見て回ってもワンナイトラブに繰り出してもお前の好きにすればいい」
「ワンナイトラブなんてしません……!!」
「たとえ話の話だろう。そうムキになるな」
「だって……」
恋愛経験も、もちろん男性経験もない私がワンナイトラブなんて幼稚園児が突然大人になるようなものだ。
「その代り、俺の指示には全て従うんだ。そして、パーティでは完璧に俺のフィアンセのフリをする。いいな?」
「……正直、自信がありません」
どう考えたって私と彼は生きている世界が違いすぎる。
それに、漠然とフィアンセの振りをして欲しいと頼まれても、今日出会ったばかりで私は永斗さんのことを何も知らない。
見る人が見れば間違いなく私達が偽りの関係であることを見抜くだろう。
「そう重く考えるな。パーティの招待客は取引先の人間だ。婚約者だと挨拶をして回るが、お前が何かをすることはない。ただ隣で笑っていればいい」
「ですが……」
「出来る出来ないではない。やるんだ」
「そんな……」
なんて強引な人なんだろう。
私の言うことなんて全く聞いてくれない。やっぱりこの人も北条さんと同じ。
自信満々で傲慢で高圧的。
「……私はまだあなたという人間を信用できません」
「そうだろう。俺もお前を信用などしていない。人間は必ず裏切るものだからな」
永斗さんはそう言うと、スーツの内ポケットからマネークリップに挟んだお札を取り出しテーブルの上に置いた。
「前金だ。受け取れ」
「どうしてお金を……?」
「信用できないと言われたら、こうするしかないだろう」
「違います!私はお金が欲しいと言っているわけではありません!」
私はテーブルの上のお札を永斗さんに押し返した。
家の前に着くまでに庭には2つの大きなプールとゴルフ施設があることも分かった。
広い敷地は徒歩で移動することは不可能なぐらいの大きさだ。
「入れ」
ガレージで車を降りると、直通の入り口から中に入る。
洋風な造りのお洒落な家に足を踏み入れた瞬間、あまりの煌びやかさに倒れそうになった。
フォーマルな仕様の広大なリビングルームには明らかに高価そうなテーブルやソファが置かれている。
部屋のあちこちに飾られたキラキラと輝く調度品は目が飛び出るぐらい高いに違いない。
その場に呆然と立ち尽くしている私にソファに座る様に指示を出すと、永斗さんはテーブルに向かい合うように座った。
「今週、大規模なパーティがある。そのとき、俺のフィアンセとしてお前を紹介する」
「私がフィアンセに……?婚約者ということですか?」
「そうだ。沙羅は適役だ」
満足そうな永斗さんに困惑する。
「待ってください!私、そんなことできません……!!」
「安心しろ。婚姻届を出そうとしているわけではないし、お前の戸籍が汚れる心配はない」
「そういうことではありません!」
「何が不満なんだ」
腕を組み私を見下ろす永斗さん。
「私が永斗さんのフィアンセの振りをしなくてはならない理由が分かりません」
この家や車を見る限り、永斗さんは私とは違う世界を生きている人のようだ。
そんな人がどうして私なんかにフィアンセの振りを頼むのか理解ができない。
「理由なんて知らなくてもいい。ただ、パーティの時だけフィアンセの振りをすればいいんだ。そうすればお前の衣食住は全て俺が面倒をみよう」
「できません!」
「何が不満なんだ」
「お金ですべて解決しようとするところです!!」
永斗さんとお見合いをした北条さんがかぶって見えた。
お金に物をいわせれば相手をすべて思いのままにできると思っているんだろう。
私はこれといって取柄もない。
だけど、私にだって人としてのプライドや自尊心はある。それをないがしろにされれば黙っていられない。
「普通の女は俺のフィアンセになれたら泣いて喜ぶぞ。それなのに、お前は変わった女だ」
「確かに永斗さんはお金持ちかもしれません。でも、だからといってすべてが思い通りにいくなんて思わないでください。人の気持ちはお金では買えません!」
「俺に言い返すなんてなかなか筋のある奴だ。さらにお前が気に入った。顔も整っているし、スタイルもいい。それに、英語も話せて……なにより日本人だ」
「だから、無理です!!私にはできません……!」
どんなに断っても永斗さんは涼しい表情を浮かべている。
「沙羅が日本に帰るのはいつだ?」
「一週間後です」
「なるほど。だが、残念なことにパスポートも帰りのチケットも盗まれて帰ることができなくなってしまったわけだな」
「うっ……」
痛いところを突かれた。
確かにこのままでは予定通りに日本に帰ることはできそうもない。
まずは警察に届けを出してそれから日本大使館に連絡してパスポートを再発行してもらってから帰りのチケットを取る。
まだ来たばかりだというのにもう帰りの心配をしなくてはならないなんて。
本来ならば今頃、ロックフェラー・センターでショッピングを楽しんでいたはずなのに……!
「パスポートは一週間もあれば再発行は可能だ。心配するな。お前は予定通り日本へ帰れる」
「えっ、そうなんですか……?」
思わず顔を持ち上げると、永斗さんは全てを見透かしたように私を見つめた。
「もちろんそれは俺が手を貸せば、の話だ」
「交換条件っていうことですか……?」
「そういういうことだ」
私は唇をギュッと噛みしめた。
パーティで偽りのフィアンセを演じることなんて絶対に嫌だ。
それに、そんなことを赤の他人の私に頼むということは相当ワケアリに違いない。
そんなことを安請け合いしてはいけないと分かってはいる。
だけど正直、今私が縋りつける人は目の前のこの人しかいない。
そもそも車に乗ってしまったのが運の尽きだった。
もしここで彼の頼みを断れば一週間後どころか日本に帰れるのかさえ分からない。
それに、私にはどうしても10日後までに日本に帰らなければいけない理由がある。
『あなたと結婚します』
不本意ながら北条さんにそう伝えなくてはならない。
もしも帰れず約束を反故にすれば、叔父たちに多大なる迷惑をかけることになってしまう。
「どうする?」
私の気持ちを全て見透かしているような灰色の瞳が真っすぐ向けられる。
「……分かった。旅館に資金援助をしよう」
「え……!?」
まるで叔父たちの経営する旅館を知っているような口ぶり。
「まさか私のこと……調べたんですか?」
「当たり前だろう。お前がどんな人間か調べたうえでフィアンセの振りをするように頼んでいるんだ」
背筋が凍り付く。
この人は自分の目的を達成するためには手段を選ばない。
車内でパソコンをいじっていたのも私の素性を調べるためだったのかもしれない。
「悪い話ではないと思うぞ?」
この人が信頼に値するかも分からない。
口だけなら何とでも言える。だけど、今私はどうしようもなく無力なのだ。
「……分かりました。お手伝いします」
私の言葉に永斗さんは満足げに頷いた。
「賢明な判断だ。明日、警察と日本大使館へ連れて行くように手配をしておく。そのときにパスポートの再発行もすればいい」
「……よろしくお願いします」
小さく頭を下げると、これからの生活について説明を受けた。
「お前がここにいる間の金は全て俺が出す。お前専用の運転手も用意しよう。俺が指示を出した時間以外は自由だ。行く予定だった観光スポットを見て回ってもワンナイトラブに繰り出してもお前の好きにすればいい」
「ワンナイトラブなんてしません……!!」
「たとえ話の話だろう。そうムキになるな」
「だって……」
恋愛経験も、もちろん男性経験もない私がワンナイトラブなんて幼稚園児が突然大人になるようなものだ。
「その代り、俺の指示には全て従うんだ。そして、パーティでは完璧に俺のフィアンセのフリをする。いいな?」
「……正直、自信がありません」
どう考えたって私と彼は生きている世界が違いすぎる。
それに、漠然とフィアンセの振りをして欲しいと頼まれても、今日出会ったばかりで私は永斗さんのことを何も知らない。
見る人が見れば間違いなく私達が偽りの関係であることを見抜くだろう。
「そう重く考えるな。パーティの招待客は取引先の人間だ。婚約者だと挨拶をして回るが、お前が何かをすることはない。ただ隣で笑っていればいい」
「ですが……」
「出来る出来ないではない。やるんだ」
「そんな……」
なんて強引な人なんだろう。
私の言うことなんて全く聞いてくれない。やっぱりこの人も北条さんと同じ。
自信満々で傲慢で高圧的。
「……私はまだあなたという人間を信用できません」
「そうだろう。俺もお前を信用などしていない。人間は必ず裏切るものだからな」
永斗さんはそう言うと、スーツの内ポケットからマネークリップに挟んだお札を取り出しテーブルの上に置いた。
「前金だ。受け取れ」
「どうしてお金を……?」
「信用できないと言われたら、こうするしかないだろう」
「違います!私はお金が欲しいと言っているわけではありません!」
私はテーブルの上のお札を永斗さんに押し返した。