7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました

「みんな聞いて。今日北条さんに結婚しますって伝えるね」

私は焼いたトーストをかじりながら食卓を囲む家族に伝えた。

「お姉ちゃん、ホントに結婚する気なの！？」

三女の美緒が驚きに目を見開く。

「沙羅、無理をしてるんじゃないの？」

「あたしもそう思う。お姉ちゃん、ちゃんと考えて決めなよ！」

叔母の言葉に茜が続く。

「無理なんてしてないよ、大丈夫」

「だけど、お姉ちゃん北条さんのこと好きじゃないでしょ！？お父さんとお母さんが言ってたじゃん！結婚は愛する人とじゃなきゃしちゃいけないって！」

「今は確かに北条さんを愛していないかもしれない。だけど、結婚して時間が経てば――」

言いかけて言葉を切る。

私は本当に北条さんを愛せるんだろうか……？

永斗さんを愛したように……。あんなにも熱い感情を北条さんに抱くことができるの……？

「とにかく、決めたの。おばさん、今日の１０時に梅の間だからよろしくね」

「……うん」

叔母が不本意そうな表情で小さく頷く。

「ご馳走様。ほらっ、二人とも早く朝ご飯食べなきゃ。学校遅刻するよ！」

食パンを一枚食べるのも一苦労だった。パンが喉を通らず、なんとか水で流し込んだ。

茜と美緒を急かして席を立ち食器を流しに運ぶと、「ごめん、洗い物後でやるね！」と言い残して階段を駆け上がる。

「あれ……？私ってばどうしちゃったの……？」

部屋に飛び込み後ろ手に扉を閉めると、その場にズルズルと座り込む。

ふいに溢れる涙は拭っても拭ってもとどまることはない。

「永斗さん……」

愛しい人の名前を呼ぶと『沙羅』と私の名前を呼ぶ永斗さんの声が蘇る。

忘れようとしたって忘れられるはずがない。

だって、私は今もまだこんなにも永斗さんのことを愛しているんだから――。

私は膝を抱えて声を押し殺して涙を流した。