7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました

「なぜ止めるんだ……！まさか、この男と知り合いなのか！？」

「それは……」

思わず口をつぐむと北条さんは怒りに顔を赤らめた。

「少し容姿がいいからと調子にのって他の男に手を出していたなんて……！なんて尻軽な女なんだ！！」

北条さんの怒りは次第にヒートアップしていく。

「お前は俺と結婚するはずだろう！！それなのに、どうして他の男が現れる！！俺に恥をかかせようっていうのか……！そんなこと許さないからな！」

北条さんは血走った目で私を睨み付けると、腕を振り上げた。

「……ーーっ」

咄嗟に肩をすくめて目をつぶる。

叩かれると構えたのに、いつまで経ってもその手のひらは私に振り下ろされない。

恐る恐る目を開けると、北条さんの手を永斗さんが押さえつけていた。

「感情に任せて女性に手を挙げようとするなんて最低な男だ。急いできて正解だった」

「くっ……い、痛いじゃないか！！その手を離せ！！この無礼者！！」

手を振り払うと北条さんは永斗さんを睨み付ける。

「無礼なのはお前のほうだ。今度沙羅を罵ったら絶対に許さない」

「なっ、偉そうなことを言うな！俺が誰か知っているのか！？」

北条さんが叫んだと同時に、梅の間に高級そうなスーツを着た初老の男性が飛び込んできた。

男性に見覚えがある。そうだ……。確か北条さんの……。

「と、父さん！？どうしてここに？それより聞いてくれ！この男が俺に悪態を吐いたんだ！父さんの力でなんとかしてくれ！！」

「――黙っていろ」

「だから、こいつが―ー」

「黙っていろと言っているんだ！！このバカ息子が！！」

北条さんの恐ろしいほどの剣幕に梅の間の空気が張り詰める。

「ロバート様、この度は愚息が大変なご迷惑をおかけしました。申し訳ありません」

「なんで父さんが頭を下げる！！こんなやつ、さっさといつもみたいに始末してくれ！」

「お前は出ていけ！！このお方は私やお前ごときが気軽に言葉を交わせる相手ではない！！バカなお前でもロバートグループを知っているだろう」

その言葉に北条さんの目が点になる。

「このお方はあのロバートグループの御曹司だぞ！」

「……ロバートグループの？い、言われてみれば最近ネットニュースで見た写真と同一人物に見える……。だけど、どうしてそんなすごい人がこんなところに？」

「馬鹿め！だから言っただろう。ロバート様、本当に申し訳ありません」

「俺への無礼は許そう。だが、沙羅は別だ。彼女に謝罪するんだ」

永斗さんの言葉に、北条さんは今にも泣きだしそうな顔で「すみませんでした」と頭を下げて謝る。

「沙羅、これで少しは気が晴れたか？」

喉の奥で言葉が引っかかっている。必死に頷くと永斗さんが満足げに微笑んだ。