7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
北条親子が出て行くと、私は仲居さんに永斗さんと二人っきりにして欲しいとお願いした。

梅の間に二人っきりになった瞬間、私は腕を掴まれてあっという間に永斗さんのほうへ引き寄せられた。

「なっ……」

1ミリの隙間もないというほどに密着する。

「は、離して下さい……!」

永斗さんと会えたことは嬉しい。

だけど、海さんとの約束を私は破ってしまったのだ。

もしもこのことが海さんの耳に入ってしまえば永斗さんの身に危険が生じるかもしれない。

必死になって永斗さんの腕から逃れようと体をよじると、永斗さんがフッと笑った。

「そこまでしてお前は俺のことを守ろうとしてくれたんだな……?」

腕の力を緩めると、永斗さんは私の頬にそっと触れた。

「安心しろ。海から話は全部聞いている」

「海さんから……?」

「海とはきちんと和解した。今までの確執が嘘のようだよ」

「それ、本当ですか……?」

「ああ、全部沙羅のおかげだ」

永斗さんの言葉にじんわりと目頭が熱くなる。

「よかった……。本当に良かったです……」

「――沙羅!」

緊張の糸がプツリと切れて力が抜け、ぐらりと揺れた私の体を永斗さんは抱き留めた。

「すみません、ホッとしたらつい……」

「いいんだ。少し外へ出て風に当たろう」

私は永斗さんに手を引かれて歩き出した。
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