7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
ハイヤーの運転手は事前に知らされていたのか、最寄りのICから高速に入った。

それから約2時間ほどして辿り着いたのは東京でも有数の超高級ホテルだった。

「永斗さん……ここって……」

「俺達はもう夫婦だ。何の問題もないだろう?」

その言葉に全身が熱くなる。それって……そういうことだよね……?

ガラス張りのエレベーターで夜景を一望しながら最上階の部屋まで上がると、突き当りのスイートルームに入った。

コートをおもむろに脱ぎソファの背もたれにかけた永斗さん。

「皺になるのでハンガーにかけておきますね」

私の言葉にハッとした表情を浮かべると、永斗さんが戻ってきた。

「すまない。自分でやる」

コートをハンガーに掛けようとすると、永斗さんが代わってくれた。

「一緒に暮らすことになったらこういうところも気を付けないといけないな」

「え?」

「沙羅は良い奥さんになりそうだ。だが、無理はさせたくない。自分でできることは自分でやる」

「永斗さんのほうがよっぽど良い旦那さんになりそうです」

「そう思ってもらえるように努力はする」

あまりに真剣な永斗さんに私は気付かれないようにクスッと笑った。


ホテルの一階に入っているお寿司やさんで遅めの夕食を済ませる。

マグロやカツオなど新鮮な海の幸に私達は舌鼓を打った。

寿司と一緒に魚本来の旨味を引き出してくれる純米酒を嗜んだ永斗さんは満足げな様子だった。

「永斗さんはいつまで日本にいられるんですか?」

「明日の夕方には一度ニューヨークへ帰る予定だ」

「明日……そんな早く……」

自然と声のトーンが下がる。

明日にはもう離れ離れになってしまうなんて。

「今日の為に無理矢理スケジュールを調整したからな。その分、帰ってからは忙しくなる」

「すみません、困らせるようなことを言って」

「いいんだ。可愛い奥さんのワガママならいくらでも聞こう」

目が合うと永斗さんが優しく微笑んだ。

灰色の瞳が真っすぐ向けられる。

それだけで私の体は信じられないほどに熱を帯びる。

「これからもたくさんワガママを言ってもいいんですか?」

「もちろんだ。全部俺が受け止める。だが、沙羅がワガママを言う相手は俺だけだ。分かったな?」

「永斗さんにしか言いません。私をこんなにも愛してくれるのは永斗さんだけだから……」

飲み慣れない日本酒に手を出したからかもしれない。お酒が回って饒舌になる。

それと同時に沸き上がってくる感情に私はさらに体を熱くする。

なんだかフワフワした良い気持ちになる。

「部屋に戻ろう」

カウンター席の隣に座る永斗さんの方にもたれかかると永斗さんが私の肩を抱いてそう言った。
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