7日間花嫁を演じたら、冷徹富豪な石油王の極上愛に捕まりました
そして今日、私と永斗さんの結婚式が開かれることになっている。

ロバートグループの人間だけでなく取引先の企業まで多数の招待客を招いて、教会で盛大に行われる予定だ。

その後の披露宴は別日を設けカルフォルニアにある永斗さんのお父さんの所有する大邸宅で行うことになった。

完治はしていないものの、永斗さんのお父さんの病状は比較的落ち着いてる。


式が始まる直前、私は永斗さんと庭で会う約束を交わした。

そのきっかけは、『結婚式の前に花嫁姿を見せると幸せになれないっていうジンクスがあるんです』というマリアの言葉だった。

そんなジンクスがあることを全く知らなかった私に、マリアはファーストミートなるものをおススメしてきた。

新郎新婦が式直前に始めてお互いの姿を見せあうセレモニーらしい。

『永斗さん、絶対に喜びますよ!』

マリアの強い押しで私は素直に従うことにした。

そのため、結婚準備に当たって用意したドレスも永斗さんに見せることは一度もなかった。

永斗さんは「早く見たい」と不満げだった。

庭に出ると、永斗さんは私に背中を向けて立っていた。

足音を立てないようにゆっくりと近付いていく。

そして、あと一歩と言うところで私は「永斗さん」と名前を呼んだ。

永斗さんが振り返る。

目が合うと、永斗さんが息をのんだのが分かった。

「……俺の花嫁はなんて美しいんだ……」

クラシックなコードレースを組み合わせたシンプルなプリンセスラインのウエディングドレスに身を包んだ私に永斗さんが感嘆の声を漏らす。

ドレスのデザインは海さんにお願いした。

デザイン学校に通い始め、みるみるうちに才能を開花させた海さん。

最近デザインした子供服のデザインは企業のコンペで最優秀賞を受賞した。

『僕でいいのかい、沙羅』

以前私に取った言動を気にしている様子の海さん。

『海さんがいいんです。お願いしてもいいですか?』

『……分かった、任せてよ。絶対に後悔させないから』

海さんと時間をかけて何度と話し合いようやく完成したフルオーダーの世界に一つだけのウエディングドレス。

永斗さんに褒めてもらえて嬉しさと幸せが同時に込み上げてくる。

「永斗さんも素敵です」

黒のタキシード姿の永斗さんに胸が高鳴る。

もう半年も一緒にいるというのに、私はいまだに永斗さんにドキドキさせられっぱなしだ。

「沙羅……」

私の名前を呼ぶと、永斗さんは愛おしそうに私を抱きしめそっと耳元に唇を寄せた。

「愛してる。毎日言っても言い足りないほどに……」

あまりにも真っすぐな永斗さんの言葉に胸が震える。

「俺のすべてをかけて、必ず幸せにする」

「私はもう十分すぎるぐらいに幸せです」

「まだまだこんなものでは足りない。覚悟してくれ」

言葉で、態度で、永斗さんのすべてで私への愛を伝えてくれる。

だから、私もこたえたい。永斗さんのその想いに……。

私は背伸びして永斗さんにそっと口づけた。

「沙羅……」

「愛してる、永斗」

驚いたような表情を浮かべた永斗さんはすぐに笑顔になる。

「幸せをもらっているのは俺の方だな」

そう言って私の体を優しく抱きしめたのだった。
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