元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
具体的にどこにいるのかを聞けば、一番近い人でデマール領から馬車で数日の場所だった。この話だけで容疑者から外せるわけではないが、未だにこの辺りに住んでいる残り一人が一番の容疑者だ。
それからシエラは、ついでに被害者であるマルガリータの人柄について尋ねた。すると、話を聞いた使用人たちは、別々に話を聞いたにもかかわらずほぼ同じ話をした。
「マルガリータ様は、昔から高慢で貴族という地位に並々ならぬ誇りを持つ女性でした。それでも美しい方だったのですが……一年ほど前から様子がおかしくなりまして……」
暗く沈んでいたかと思えば突然高らかに笑いだしたり、意味不明な言葉を繰り返したり、何かに怯えたように震えていたり。
あまりに情緒が不安定で、悪魔か何かに憑かれたのではないかと噂されていたぐらいだった。
さらに、マルガリータの兄である男爵の様子が変わり始めたのも同じころだった。といっても、彼の方は目に見えておかしくなってしまったというほどではなく、不健康に痩せ部屋にこもる頻度が増えたぐらいだが。