元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
恐らく彼に関しては、男爵家の財政が傾いてきたことによる心労だろう。使用人を解雇したという時期とも重なる。
ともかく、使用人たちはマルガリータのことを敬遠しており、事件のあった日に何故マルガリータが街外れの小屋にいたのかは皆目見当がつかないとのことだ。
これ以上有益な情報は出てこないだろうと判断し、シエラは早速教えてもらった元使用人が住む家に向かった。
地図を頼りに道を歩くうち、来たときに感じた異様な雰囲気をまた感じ取った。
妙に人通りが少ない。まれにすれ違った人は、シエラを見ると怯えたような表情を浮かべて道を空けた。
さらにただごとではないと感じたのは、道を走っていた子どもを、親と思しき女性がものすごい形相で追いかけ、こんな風に怒ったことだ。
「外に出たらだめって何回も言ってるでしょ!?この間も向かいの通りの子がいなくなったばかりなのよ!あんたまで誘拐されたらどうするのっ?」
誘拐、という単語が確かに聞こえた。
話を聞こうと思ったが、母親は外で遊びたいとごねる子どもを無理やり家に引き込んで扉を閉めてしまった。