元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
「俺は探偵ではありませんよ。探偵は君でしょう、シエラ・ダグラス」
「あ、えっと。つい……ごめんなさい」
そうだ。今までこの世界では、「自分がいなければ迷宮入りする事件がある」という意識のもと気を張っていた。しかし、天才的な頭脳を持った探偵の生まれ変わりが現れたことで、シエラの気持ちはすっかり緩んでいたのだ。
小さく震えた声の謝罪を聞き、ルシウスは目を閉じてため息をついた。
「まあ別に怒っているわけではありません。君が『令嬢探偵』として世間に名を知らしめている以上、それなりに責任を持つべきだと思っただけです」
「……はい」
「ああ、それと──俺はもう、二度と探偵はやらないと誓っていますので」
「え」
思わず顔を上げた。
三度の飯より謎が好きだった彼が、二度と探偵をしないと誓った?
意味深な言葉だったが、何となくその真意を尋ねることはできなかった。