元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
そんなシエラの心中など知らず、ルシウスはゆっくり両手を引っ込めた。
「乗り物酔いをした、というわけではなさそうですね。薬物購入のために領地の子どもたちを誘拐して売る。確かに気分の悪くなる話です」
「……」
「あとこの手紙を一通り確認していて見つけたのですが、……この最後のところを見てください」
だめだ、頭を切り替えなくては。シエラはぎゅっとこめかみを押さえて、ルシウスが指す箇所を確認する。
売買候補の子どものたちの名をずらりと書き並べてあった。
その最後の行に書かれていたのは……。
「元デマール家使用人ダイアナの息子。6歳」
元デマール家使用人。シエラが話を聞きに行ったあのダイアナだ。
そしてその名前には、上から線を引かれ、日付が書き込まれている。
「普通に考えれば、この日付は誘拐する予定の日、もしくは取引の日といったところでしょうねぇ」
「……でも」