元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。



 彼がルシウス・クレイトンに転生した今も、同じように美しい容姿は活用しているのだろう。

 貴族の子息などにはたまにいる程度の美しさではあるが、一般の人が思わず見とれてしまうレベルであることは確かだ。


 現に、ダイアナはぼうっとした目で彼のことを見ている。



「俺のことはお気になさらず。シエラ嬢のちょっとした知り合いですよ。……それより先ほど、息子さんが行方不明になったことについて認めましたね?」

「……! な、何のことです? ちょっと混乱して変なことを言ってしまったようです」

「なるほど。ですが、マルガリータ・デマールが遺体で見つかった日の前日、『息子がいなくなってしまった』とパニックになっている貴女を見た、と近所の方からの証言があったようですが」



 近所の家に聞き込みをしてきたのはつい数分前のことだ。ルシウスの指示で、シエラは嫌な顔をされつつも数人から話を聞くことに成功した。ちなみに彼はその間馬車から一歩も出なかった。

 今の君は助手ではなく探偵だ……とか何とか言われたばかりな気がするが、この構図ではどうも前世との違いがわからない。



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