元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
ルシウスは微笑を浮かべ、シエラに顔を向ける。
「そうでしょう、令嬢探偵殿?」
「え、ええ……。そうね。凶器であるあのハサミは誰でも持っているようなごく普通の型のようですし、誰かが真相にたどり着く可能性は高くないかと」
科学捜査のできないこの世界では、指紋がとられる心配もないし……と心の中で付け足す。
ダイアナは呆然とした様子だったが、やがて力が抜けたように腰を下ろした。その目から、つっと涙が流れ落ちる。
「ありがとう……ございます……。このご恩は、一生忘れません……」
しばらくの間、馬車の中ではダイアナがむせび泣く声だけが響いていた。