元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。




「あの、黒瀬さん」

「君が聞こうとしていることは何となくわかりますよ。命を賭けて助けたはずの黒瀬蒼也が、何故あの日から間もなく死んだのか、でしょう?」

「は、はい……」



 次の言葉を待ったが、ルシウスはしばらく窓の外を眺めながらしばらく黙っていた。

 それでも急かさず辛抱強く待っていると、やがてゆっくりとシエラに目を向けた。



「多くの人の命を脅かす凶悪犯との対決の末に……という最期ならば、探偵として格好がついたでしょうが。前世の俺の死因は、持病の悪化によるものです」

「え、じびょう……病気、ですか?」



 言われてもピンとこなかった。

 あの黒瀬が病気だった? それも死に至るような?

 確かに細くて色白で不健康そうな雰囲気は醸し出していたが、そこまで体調が悪そうにも見えなかった。


 それでも、一つ思い当たったことがある。

 黒瀬は、助手の仕事だとか何とか言って、聞き込みだとかアリバイ検証だとか、体力を使うことは基本的に静奈に丸投げしていた。

 単に面倒くさがっているのだと思っていたが、それは体調の悪さが理由だったのだとしたら。



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