元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。


 つい口から出てしまった言葉。

 黒瀬のことが好きだった。静奈が決して言えなかった言葉が溢れ出てしまった。

 だが、ルシウスはその言葉に対して特に反応を示さなかった。やはり静奈の気持ちはとっくに承知だったのだ。


 そう思うと、前世のことが今さら恥ずかしいやら苦しいやらで、胸が痛い。


 だめだ。気持ちを切り替えなくては。そう思ったシエラは、パンっと両手で軽く頬を叩いた。

 偶然玄関付近にいたレオンにその様子を目撃され、何事かと尋ねられたので、「今からお見合いだから気合を入れているの」と答えた。


 今はとりあえず、前世の恋に心を痛めるなどという生産性皆無なことはやめて、これからのお見合いをどうにか切り抜けることを考えなければ。



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