元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。



 初めて来るラドクリフ侯爵家の広大な屋敷。はしたないと理解しつつも、シエラは思わずきょろきょろとしてしまう。



「こんにちはシエラ嬢。お会いできて嬉しいよ」



 庭に面した一角で、シエラは彼女を招いた張本人と向かい合っていた。


 クリストファー・ラドクリフ侯爵。

 25歳という若さながら侯爵家の当主だ。顔立ちはルシウスとそう変わらないぐらい整っており、若い令嬢たちに人気がある。

 女性との浮いた話も多少はあるようだが、これまで婚約者はいなかったようだ。彼の妻の座を狙っている令嬢は多いはずなので、今回の話が噂になれば、シエラがたくさんの嫉妬の目を向けられることは必至だろう。



「そう緊張しないでくれ。わたしのわがままで来てもらって悪かったね」

「いえ。お招きありがとうございます」



 シエラの答えにラドクリフ侯爵はにっこりと人の好さそうな笑顔を浮かべる。

 顔が良くて優しくて。人気があるのは納得できる。


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