元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。



 さらに言えば、彼の言うパーティーがいつのものなのかわからないが、シエラが一人でいるのは「他人と馴れ合う気がない」というわけではなくて、単に友達がいないだけだ。


 まあでも、褒めてくれているのだからあえて自分から評価を貶めることもないだろう。

 それに、シエラの目的は婚約の話を円満に断ること。彼の感性を否定して気分を悪くさせるのは違う。



「ラドクリフ侯爵、この度のお話は私の身に余る光栄です。でも、私は今後も結婚はしないつもりなんです」



 シエラはゆっくりと言葉を選びながら言う。



「恐らくご存知のことと思いますが、私は探偵を生業にしています。探偵業は私にとって生きる意味とも言える大切なもの。仮にどこかに嫁いだとしてもやめるつもりは一切ありません」

「令嬢探偵として名を馳せていることはもちろん知っているし、貴女が望むのならわたしは辞めさせるような真似はしないが……」

「そんな女を妻にするとなれば、侯爵の評判を落としかねません。私のせいで他人の評判が落ちるというのは本意ではありませんから」



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