元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。




 シエラがお見合いに行くと言って出て行った後、ルシウスは何となく地下の部屋に留まっていた。

 意味もなく天井を見上げ、意味もなくその染みの数を数える。


 そうしているうちに、どたどたと階段を駆け下りる音が聞こえてきて、ドアが勢いよく開いた。



「ルシウスさんっ!大変だよ、さっきシエラお姉さんに会ったんだけど……」



 息を切らせて部屋に入って来たレオンだったが、ルシウスを見るなり顔をしかめた。



「うわ、機嫌悪っ!」



 感情は表に出していないつもりだった。

 ルシウスは静かに息を吐く。



「シエラ嬢が何ですって?」

「……その様子じゃあ聞いたんでしょ?シエラお姉さんがお見合いに行くってこと」

「お相手はラドクリフ侯爵家のご当主様だそうで」

「あのさあルシウスさん。いい加減はぐらかすのやめてほしいんだけど」



 レオンはがしがしと頭を掻きながら、ルシウスの向かいに座った。

 外見こそ十歳にも満たない子どものようだが、シエラの前などで見せる子どもらしい演技をやめると、歳相応の表情をする。



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