元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。



「僕さ、シエラお姉さんのこと割と本気で好きだよ。伯爵家のお嬢様だし、さすがに相手にされないってわかってるけど、本当に結婚できたらサイコーだなぁとか思ってるもん。でもさ、ルシウスさんは僕よりずっと真剣に好きなんじゃない?」

「……」

「今の態度もそうだけどさ、シエラお姉さんが来てても僕に知らせず二人きりになろうとしたり、ちょっとくっついただけで目の色変えたり、かなり露骨だよね」



 ルシウスは腕を組んで目を閉じ、自嘲気味に唇の端を上げた。



「……好き、とは違いますよ」

「はぁ?この期に及んで否定するの?」

「少なくとも、レオンが思っているような『好き』とか『恋』といったような美しい感情とは異なります」



 ……長い間、会えるわけもないのに想い続けていた人の生まれ変わり。

 彼女への気持ちを、そんな美しい言葉で表すのには抵抗があった。



「そうですね、黒く醜い執着心……という表現が近いのでしょうか」




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