元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
想いは深くなるばかりだったのに、吐き出し口がなく、煮詰めて煮詰めてどろどろになった感情。今さらそんなものを表に出すのはためらわれるほど、ひどく醜いものになっている。
しかしそんなことなど知らないレオンは、きょとんとした顔で首を傾げた。
「それって、要するに『好き』ってことでしょ?」
「だからそんなものでは……」
「ああもう!頭が良い人って無駄に色々考えるよね。じゃあ聞くけどさ、ルシウスさんはこのままシエラお姉さんのお見合いが上手くいって、何たら侯爵と結婚しちゃっても良いの?」
「……良いわけがないでしょう」
彼女が他の男のものになる。少し想像しただけで、腹の奥底から沸々と怒りが湧き上がってくる。
自分に怒る権利はないと十分に理解していても、どうしようもない。
「じゃあシエラお姉さんに説得しようよ!結婚なんてしないでって」
「貴族同士の結婚というのは、基本的に家の結びつきを考えたものです。彼女にその気がないからと止められるものではありません。実際、父親に言われてしぶしぶといった様子でしたし」
「そっか……。ならどうすれば」