元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
そうやって探偵を続けて二年の月日が流れたある日。黒瀬は馴染みの刑事に、少々遠い場所まで呼び出された。
御園グループという、不動産会社や食品会社などを広く手掛けているグループの社長が殺された。身内の犯行ではないかと疑っているが、アリバイや殺害方法に決め手がなく困っているとのことだった。
いつものごとくさっさと解決するつもりだったが、関係者に話を聞いていくと、刑事たちが手こずっているのも理解できるぐらい面倒な事件だった。それでも、調査を始めて三日ほどで無事犯人特定に至った。
犯人は、殺された社長の弟夫婦。共犯関係であった夫婦の証言により、警察の捜査が撹乱されていたのだった。
──夫婦が警察に連行されていくと、御園家の屋敷は嘘のように静かになった。
事件が解決した以上、いたずらにこの場に留まる必要はない。黒瀬はそろそろ自分も引き上げようと、無駄に広大な庭を歩いて出口へ向かっていた。
その途中だった。
黒瀬の目に、咲き誇る薔薇の前でぼんやりと立ち尽くす少女の姿が映った。