元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
今までも、黒瀬が犯人を暴いた後、その犯人の肉親などと対面するという機会はあった。そしてそのような人たちは、総じて嫌な顔をする。
多いのはは気まずさから顔を背けられる。その他はお前が余計なことをしなければ、と罵声を浴びせられる。両方何度も経験がある。
別にこの程度の言葉に傷つくほどやわな性格ではないが、それにしても静奈に向けられる表情はあまりに意外だった。
「貴女は、俺が憎くはないんですか?」
ようやくそう尋ねれば、彼女は不思議そうに首を傾げた。
「憎い?どうしてですか?」
「俺のせいで貴女の人生までもが狂ってしまった。そのようには思いませんか?」
「まさか。私の人生が狂ったのだとしたら、それは探偵さんではなく両親のせいですから。あの人たちは”人を殺める”という越えてはならない一線を越えてしまったんです。しかも小細工をしてその罪から逃れようとした。その真実を見抜いてくれた探偵さんに感謝こそしても、憎むなんてことあるはずがないですよ」