元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
商売である以上、ルシウスは様々な人間相手に愛想よく振る舞うことが要求された。整った顔立ち、新進気鋭の商会のナンバー2、外面が良い……という条件がそろったせいで、かなりの女性から言い寄られるようになった。
しかしルシウスは、それらの女性たちに全くもって興味を持つことができなかった。物は試しと適当な女性と付き合ってみたこともあったが、触れたいという欲望が驚くほど起こらなかった。
無論、原因はわかりきっていた。
養父からは、自分と同じように異性を愛せないのではないかと言われたが、そうではない。ある意味もっと厄介だった。
静奈しか、愛することができない。
別の人間に生まれ変わり、長い年月が経ってなお、彼女にとらわれ続けている。
もし他人がルシウスの心の内を知ったら、それはもはや呪いだと思うかもしれない。
だが、これで良かった。それなりに充実したルシウスとしての人生を送るうちに忘れかけていたが、これは罰なのだ。彼女にとらわれている状態が正常なのだ。