元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
令嬢探偵、油断する





「お嬢様。今日もラドクリフ侯爵から花束が届いていますよ」

「ま、また……」



 にんまりとどこか嬉しそうに花束を持ってきた侍女と対照的に、シエラはげんなりした表情を浮かべた。

 部屋の中には、既にたくさんのポピーの花が花瓶に飾られている。


 ラドクリフ侯爵邸へ行ってから、ほとんど毎日ポピーの花束が届く。『こんな綺麗な花でできた花束をもらったら、思わず笑顔になってしまいそうです』なんて言わなければよかった。



「いつも通りこれも花瓶に挿しておいてもらっていいかしら。あっちの萎れてきた花と入れ替えましょう」



 シエラはそう言いながら、ドレッサーに置かれた香水の瓶を取った。

 手首に少量付けると、ふわりと爽やかな薔薇の香りが広がった。



「あら?お嬢様、今日も薔薇の香水ですか?最近気に入っていらっしゃいますね」

「気に入っているわけではないのだけど……少し気になることがあって」

「気になること、でございますか?」



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