元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。



 シエラはうなずいて手首を鼻に近づける。

 香りは別に、嫌な感じはしない。

 ラドクリフ侯爵に会った時、彼が付けていた薔薇の香りの香水が何故かわからないがすごく嫌な感じがした。自分が薔薇の香りが苦手だという認識はなかったため、それが非常に不思議だった。

 持っている限りの薔薇の香りの香水を数日前から色々試しているが、普通に良い香りとしか思わない。


 シエラはため息をついて、花束と共に届けられたメッセージカードを眺める。



「『今日もとっておきの花を選んだよ。だけど貴女の美しさの前ではかすんでしまうのだろうね』か……やっぱりちょっとぞわぞわする」



 慣れていない甘い言葉がダメなのか、単にあのようなタイプが苦手なのか。日々送られる愛の言葉も、シエラに全く響いていなかった。

 響かない理由が後者であるなら、他の人からの甘い言葉なら嫌ではないだろうか。

 例えば、黒瀬から言われたりしたら……




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