元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
しばらくその花を観察していたルシウスの顔色が変わった。
「この花はどこで見つけました?」
「え?えっと……侯爵家の屋敷の庭だったよ。何かないかなって思って試しに忍び込んでみたとき、小さな温室を見つけたんだけど、そこにたくさん植えてあってさ。こっちはこっちで綺麗だなって思って、思わず一本抜いちゃった」
「……レオン、それは立派な窃盗ですからね。でも、今回はお手柄です」
ルシウスは「お手柄」と褒めながらも厳しい表情を崩さない。二つの花をテーブルの上に並べて言う。
「この二つの花は、貴方が言うよう近い種類のものです。が、これらには一つ、大きな違いがあるのですよ」
「違い?」
「あちこちに咲いていたというポピーは園芸用としても親しまれている花ですが、この温室で育てられていたという方は──違法薬物の原料となる成分が含まれています」
「げ、薬物⁉」
レオンは、花に触ろうと伸ばしかけていた手を慌てて引っ込めた。成分が含まれているのは実であり、この状態では問題ないと教えると、ほっと胸を撫で下ろした。