元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
偶然にもシエラは薬物関係の人間にずいぶん縁がある。ルシウスはそう思ってからふと気づいた。
偶然ではないのだとしたら。
令嬢探偵、シエラ・ダグラスは有名人だ。特に、噂好きの貴族たちの間では、新しく事件を解決したとなれば、その話は瞬く間に広がる。
当然、デマール家の一件はラドクリフ侯爵の耳にも入っているはずだ。
そして、ラドクリフ侯爵がシエラに求婚したのは、時期的にその話が広まったであろう直後ぐらい。
「……まずい」
ルシウスは唇を噛み、レオンを押しのけるようにしてドアノブに手をかける。
「レオン、少し出かけます。午後から来客があるので対応しておいてください」
「え、出かけるってどこに⁉僕お客さんの対応とかできないけど⁉」
「ではジョシュアさんにでも頼んでどうにかしておいてください。こちらは一刻を争うかもしれません」
それだけ言い残して部屋を出ると、一人廊下を走る。