元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。




「いやあ嬉しいじゃないか。まさかシエラ嬢から会いに来てくれるなんて!」



 ラドクリフ侯爵は、以前会った時と同じような歓迎モードでシエラのことを迎えた。

 しかしシエラには、この前とは全く違う緊張感があった。あまりに口が渇いていたので、とりあえず出された紅茶を一口だけ飲んだ。

 そして、ゆっくり息を吐き出してからラドクリフ侯爵の目を見る。



「侯爵。ハーリー、テレサ、アラン……という名前に心当たりはありませんか?」



 ほんの一瞬、彼の眉がぴくりと動いた。シエラはそのわずかな動揺を見逃さなかった。



「心当たりがおありですね?」

「……シエラ嬢のご友人かな?残念ながらすぐに顔は思い出せないのだが」



 ふわりとした柔和な笑みを浮かべ、侯爵は優雅に紅茶を飲む。



「では少し話しを変えます。侯爵は、先日私が解決した、マルガリータ・デマールさんの事件はご存知ですか?」

「ああ、それはもちろん。薬物を常用しおかしくなり自殺したマルガリータ嬢が、実は領地の子どもたちを誘拐して売っていたという話だったね。まったく、酷い話だ」



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