元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
大袈裟に肩をすくめて見せるラドクリフ侯爵。しかし、先ほどよりいくらか目付きが鋭くなったのがわかる。
「彼女がその誘拐事件に関わっていることを知ったのは、偶然彼女の部屋で人身売買に関する記録を見つけたからです。記録された紙からは、ほんのり花のような匂いがしていて……それが、侯爵が付けている香水と全く同じ匂いなんです」
「……ああ。まあ、そう珍しくもない香りだからね。その記録を書いたマルガリータ嬢も偶然同じ香水を使っていたのではないかい?」
「では、その記録書の中に、侯爵が毎日のように私に送ってくださったメッセージカードと同じ筆跡があったことはどう説明しますか?」
柔和な微笑みは、侯爵の顔からすっかり消え去っていた。
「ちなみに、先ほど名前を出した三人は、マルガリータさんに誘拐された最初の子どもたちの名前です。ちゃんと覚えてらしたみたいですね」
「……貧乏くさい平民の子ども三人。大して高くはならなかったけどね」