元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
「まさか私がたった一人で敵地に乗り込んできたとお思いで?」
「何?」
「探偵なんてことをしていると、自然と衛兵をしている知り合いも増えてくるのですよ。今、そんな彼らの中から、とびきり屈強な方々に屋敷の外で待機してもらっています。貴方に逃げ場はありません」
勝ちを確信していた。
これでラドクリフ侯爵は捕まり、全ての悪事は明るみに出るはずだった。
しかし──
「は、はは……ははは」
静かにうつむいていたラドクリフ侯爵は、静かに肩を揺らして笑いだした。
「はは、なるほど。衛兵ね。……おい、うちの屋敷の前でこそこそと身を潜めていた怪しげな男たちはどうした?」
侯爵は顔を上げて、振り向きながら言った。
するといつの間にか、侯爵の真後ろに、黒いローブを着てフードを目深にかぶった男が三人立っていた。彼らは恭しく頭を下げる。
「はい。ご指示通り薬を嗅がせて気絶させました。全員で五人いましたが、屋敷の中に意識をとられている様子だったので後ろから近付けば気が付かれることもなく。今はまとめて一室に閉じ込めています」
「そうか、ご苦労」